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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第8ステージ】怪物が力の差を見せつける激走でマイヨ・ジョーヌ奪還!タデイ・ポガチャル「攻撃は最大の防御なり」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかそう、トゥーンスには急ぐ理由があった。はるか後方から、怪物がひとり、猛烈に追いかけてきていたから。
メイン集団ではUAEが隊列を組んだ。前日は望まぬ形でチームメートを働かせたポガチャルが、この日は精力的に主導権を握った。逃げには最大6分の余裕を与えた。ロム峠に入ると、イネオスが最前列に横並びしてきたけれど……ダヴィデ・フォルモロの鬼気迫る牽引で退けた。
ファンデルプールはこの日マイヨ・ジョーヌを脱いだ
このフォルモロの刻む強烈なテンポに耐え切れず、残り35km、マチュー・ファンデルプールは集団から脱落していった。6日間守り抜いてきたマイヨ・ジョーヌを、ついに脱ぐ時がやって来た。
「もう少し長く粘れたかもしれない。でも、その後もまだ山が残っていたし、マイヨ・ジョーヌを守るのがあまりにも難しいことは分かっていたんだ。だから自分のペースでフィニッシュまで走ることに決めた。予想よりも長くジャージを着ることができたし、素敵な区間も1つ勝った。今大会でこれ以上手に入れるべきものなど、僕にはもうないんだ」(ファンデルプール)
ポガチャルは長々と待たなかった。その直後だ。イネオスのアシストたちの調子がそれほど良くないことを察知すると、自ら大きな一撃を振り下ろした。フィニッシュまで約32km。直線的に切られた鋭い加速に、ただリチャル・カラパスだけが反応した。ほかには誰一人として抵抗する者も、抵抗できる者もいなかった。そのカラパスも、昨ツール覇者の再度の加速に、あっけなく振り落とされた。22歳ポガチャルの、無謀にも見える、独走の始まりだった。
「攻撃は最大の防御なり。最終3峠に入る前に、僕は動こうと決めたんだ。チームメートたちにもこう伝えた。『トライしよう、レースを壊しに行こう』って。その通りのことを僕はやり遂げた」(ポガチャル)
上りでも、下りでも、勢いは決して弱まらない。それどころかはるか先を逃げていたはずの選手を1人、また1人ととらえていく。プールスを追い抜き、ヨン・イサギレやウッズを抜き去り、あと目の前を逃げているのはトゥーンスだけ……。ただし、そのトゥーンスは、ポガチャルの12秒前にコロンビエール山頂を越えていた。文字通り危機一髪。
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