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サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか前の8人は、残念ながら、協力体制は最高とは言えなかった。スプリントエース擁するドゥクーニンク・クイックステップとアルペシン・フェニックスが、1人ずつ逃げに紛れ込んでいたせいだ。先頭交代はまるでスムーズにいかず、後方からの圧力はどんどん高まっていく。
だからこそ34kmほど走った先で、ファンアーヴェルマートは単独走行に切り替えた。取り残された7人が、集団の大きなうねりに飲み込まれていく直前だった。
少なくともあと23日間は現役五輪ロード王者であり続けるファンアーヴェルマートは、しかし幸いにも、ひとりぼっちの時間をそれほど長く過ごさずに済んだ。後方からロジャー・クルーゲが追いかけてきて、しばらく先で合流したからだ。背負うべきスプリントエース、カレブ・ユアンが大会を去り、どうやら最終発射台役にも滅多にない逃げのチャンスが巡って来た。ちなみにクルーゲも2008年五輪ポイントレース銀メダリストであり、東京ではオムニウムとマディソンに出場する。
クルーゲと逃げるファンアーヴェルマート
「8人なら最後まで行けたに違いないんだ。でも逃がしてはくれなかった。その後は2人になったけれど、逃げ切りが難しいだろうことは分かっていた。それでもファンムールが数日前にあわや逃げ切りというシーンを目にして、インスピレーションを受けた」(ファンアーヴェルマート)
序盤8人の逃げでは、内部に潜り込むことで上手くレースの手綱を握ったドゥクーニンク・クイックステップとアルペシン・フェニックスが、今度はプロトン牽引を中心になって行った。
残り56.3km地点の中間ポイントで8選手が熾烈なスプリントを繰り広げ、ソニー・コロブレッリが集団内先頭通過=3位通過を果たした時点では、最大2分ほどあったタイム差はすでに30秒にまで縮まっていた。かといって、続くカウンターアタックを避けるためには、あまりに早く吸収してもならぬ。そんなセオリーに則って、ウルフパックの名補佐役ティム・デクレルクの采配の下、30秒から50秒ほどの間で延々コントロールが行われた。残り20kmで15秒にまで追い詰めた後でさえ、ウルフパックは決して一飲みにしようとはしなかった。むしろ再び少々手綱を緩め、吸収までの時間を出来る限り遅らせたほどだ。
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