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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第2ステージ】大好きな祖父に捧げる渾身の勝利。マチュー・ファンデルプール「あなたこそ僕にとって最大のチャンピオンです」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかフィニッシュまで17km地点のこの攻撃は、ただし、勝利に向けたアタックではなかった。だからこそ何度も振り返り、後方の位置を常に確認した。燃え尽きてしまわぬように、最低限の距離だけを保ち続けた。理由は単純。1つ目のてっぺんでは、上位通過者3名に8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが与えられる。初日を終え総合18秒差につけるファンデルプールにとって、これぞ絶対に不可欠なアイテムだった。
「ボーナスタイムを収集したかった。それが今大会でマイヨ・ジョーヌを手にするための、唯一にして最後のチャンスだと分かっていたから。このタイムが必要だった」(ファンデルプール)
大胆に、そして賢く8秒を回収したファンデルプールの背後では、やはり首位まで18秒差につけていたタデイ・ポガチャルが、アシストと共に集団牽引に努めた。ちなみにステージ序盤に本人から「1回目にアタックするかも」と聞かされていたが、冗談だと思っていたらしい。「あれは本気だったんだね。ビックリした」というポガチャル自身も、山頂では2位争いのスプリントを制した。総合14秒遅れプリモシュ・ログリッチ、マイヨ・ジョーヌのアラフィリップ、さらには23秒遅れリチャル・カラパスを蹴散らし、5秒を懐に入れた。
ボーナスタイム用アタックを成功させると、ファンデルプールは一旦静かに集団へ吸収された。しかし休んでいたのはほんの10km弱だけ。イネオス・グレナディアーズが5人で隊列を組み上げ、厳しいテンポを強いる最前列に、4人隊列で殴り込みをかけた。元ジロ総合覇者テイオ・ゲイガンハートや昨ツール総合3位リッチー・ポート、元世界王者ミハウ・クフィアトコフスキーといったそうそうたる顔ぶれが引っ張る列車に、元パリ〜ルーベ2位シルヴァン・ディリエの先頭車両は堂々と張り合った。
クサンドロ・ムーリッセの残り1.7kmの猛加速は、どうやらタイミングが早すぎた。後輪にファンデルプールが張り付いていないことを悟ると、アルペシン・フェニックスのアシスト役はすぐに脚を緩めた。むしろ数百メートル先でのナイロ・キンタナのアタックは、エース本人が穴を埋めに走った。ジロ&ブエルタ総合覇者の攻撃に続いて、「上れるスプリンター」に分類されるソンニ・コルブレッリも加速を試みるが、ロード&シクロクロス&マウンテンバイクの3種目を網羅するオールラウンダーがきっちり動きを封じた。
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