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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第1ステージ】暴力的な努力の果てに掴んだ栄光。アラフィリップ「だからこそ勝利はよりいっそう美しいものになった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか幸いにもしばらく先でウルフパックはスピードを落とす。またスヘリンフを残り27kmで吸収したこともあり、集団内は徐々に統制を取り戻していく。ステージ優勝候補に名を挙げられたファンアールトやソンニ・コルブレッリは先頭集団に復帰し、総合優勝を狙うミゲルアンヘル・ロペスも、この時は40秒近い遅れを無事にゼロまで戻した。
それでも、すぐに、集団内の雰囲気は再び過熱していく。残り15kmを切るとポジション争いは熾烈さを増し、否応なしにスピードも上がっていく。
2つ目の巨大落車はそんな中で発生した。今度はまるでビリヤードの球がはじけ飛ぶように、四方八方に選手たちは投げ出された。ツール総合制覇4度のクリス・フルームや昨季ジロ総合覇者テイオ・ゲイガンハートも巻き込まれたが、フィニッシュまでわずか7kmしか残っていない。誰かを待つために集団全体が減速する、そんな段階にはもはやなかった。
なにより「本命」たちはほぼ全員が前に揃っていた。つまり区間争いの本命も、総合争いの本命も。3kmの最終登坂へ向けて、とりわけドゥクーニンクが猛烈な突進を行った。「狼たちの穴」と呼ばれるこの坂道へ4人隊列を組んで飛び込むと、麓の9%超ゾーンを恐ろしい勢いでぶっ飛ばした。さらには坂道最終発射台ドリス・デヴェナインスが畳みかけるように加速を繰り返し、ついにはその後輪から、アラフィリップが最前線へと躍り出た。残り2.3km。勾配が緩くなる前の一発だった。
「ドリスが脇によけた後、余計なことを考えずに全力で加速した。一旦飛び出してからは、ライバルの人数を絞りこもうと考えた。でも小さな差が生まれたのに気が付いて、悟ったんだ。みんないっぱいいっぱいなんだ、と」(アラフィリップ)
ライバルを試すためのジャブは、終わってみれば決定打となる。アラフィリップはそのまま努力を続けることに決めた。先頭で追いかけていたファンアールトは一定テンポを刻み続けるしかなく、じりじりと間隔を離されていった。すかさず同僚プリモシュ・ログリッチが追走に動き、そこに反応したピエール・ラトゥールがじりじりと追い上げるも、残り1.8kmからのアラフィリップの畳みかけるようなダンシングで、やはり後方へと突き放された。一昨秋に天へ旅立った祖父の果たせなかった夢、マイヨ・ジョーヌに向けてマチュー・ファンデルプールも後方で激しい努力を見せたが、虹色ジャージは前方へと遠ざかっていくばかり。
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