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サイクル ロードレース コラム 2021年6月25日

プリモシュ・ログリッチ物語《栄光の欠片》| 乱高下

ツール・ド・フランス by 宮本 あさか
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ただポガチャルが異次元すぎた。最終6kmの上り部分だけで、ログリッチを1分20秒も上回る驚異のタイムを叩き出した。57秒差を少々縮めるどころか、逆に59秒ものリードを奪っていた。プランシュ・デ・ベルフィーユの激坂の頂上で、マイヨ・ジョーヌの持ち主は入れ替わった。



潜在能力のあまりの高さに誰もが驚かされた

潜在能力のあまりの高さに誰もが驚かされた



近い将来グランツールを獲る日が必ず来るだろう。そう周囲も本人も考えていたのは間違いない。ただしこんなに早く、こんな形で、その日が訪れるとは想像さえしていなかった。結果を知ったポガチャルが、思わず顔を覆ったのは、なにも嬉し涙を隠すためだけではなかった。





「胸の中はごちゃまぜの感情でいっぱいだった。だってずっと昔から、ログリッチにツールを勝って欲しい、と思っていたからね。なのに僕が、彼を倒してしまった。僕が、彼の夢の実現を阻んだんだ」(ポガチャル、2020年12月15日付レキップ紙インタビューより)



21歳の若者が苛まれたそんな重い自責の念を、静かに解放したのが、敗者ログリッチだった。アスファルトに座り込み、嘆きの沼に自らを沈めてしまうことだってできたはずだ。しかし11日間マイヨ・ジョーヌを守ってきた男は立ち上がり、勝者のもとへ駆けつけると、9歳年下の後輩を優しく抱きしめた。ポガチャルは赦された。スロベニア人として史上初めてのツール・ド・フランス総合制覇を、心から喜ぶことができた。



文:宮本あさか

ーーー続く。(5/6)

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宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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