人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2021年6月24日

Tourの景色に誘われて | アンドラ

ツール・ド・フランス by 山口 和幸
  • Line

2000m級の山岳に囲まれたすり鉢の底に首都アンドラ・ラ・ベリャがあり、腕時計やアウトドアグッズを販売する店舗がひしめく。MTBも盛んで、コメンサルなどのブランドが店舗に並び、道行くサイクリストはフラットバー派が多いことに気づく。経済的に裕福な層が多いフランス人は宝飾品などを免税で購入するために訪問することが多かった。ガソリン税もなかったので国境を越えたすぐのところにあるガソリンスタンドは、かつてフランスナンバーのクルマが給油のために列をなしていた。

2009年第7ステージ、ツール・ド・フランス初出場の別府史之がアルカリスを上る

2009年第7ステージ、ツール・ド・フランス初出場の別府史之がアルカリスを上る

ユーロ通貨を導入してからはアンドラの物価もフランスに肩を並べるほどになってしまい、その影響なのか近年はツール・ド・フランスもわざわざ訪問しなくなった。それでも物価はまだフランスよりも安いので、ツール・ド・フランスで久しぶりの休息日になったアンドラでは、この日を見計らってアウトドアウエアを購入するカメラマンや、ビールの大樽を買い込む取材陣、ガソリンを満タンにする関係者が多かった。

アンドラのスキーリゾートのひとつがアルカリスだ。ここがツール・ド・フランスのゴールとなったのは3回で、ボク自身はすべて現地に足を運んでいる。1997年にヤン・ウルリッヒがここで追走するマルコ・パンターニを振り切って独走勝利して、それと同時にマイヨ・ジョーヌを獲得。このときに稼ぎ出した貯金を守りきってドイツ選手として初めて総合優勝を達成している。ゴール手前5kmほどのところにボクの仕事場となるサルドプレスが設営されるので、この日ばかりは道路脇でカメラを構えて撮影するチャンスがあった。

2009年には別府史之と新城幸也が初出場し、第7ステージでアルカリスを経験。新城は前日のバルセロナでのゴール前に落車し、この日はリタイアしても不思議ではないほどのケガを押してのレースだったが、道路脇の側溝でいい写真を撮ろうと待っていたボクを見つけてニコッとほほえんでくれた。

落ち着いた石造りの家並み。カフェでオーダーしたものも道路を横切って席まで届けてくれる

落ち着いた石造りの家並み。カフェでオーダーしたものも道路を横切って席まで届けてくれる

3度目の2016年は集中豪雨と大ぶりの雹の襲来で大変なステージなった。ジャイアント・アルペシンに所属していたトム・デュムランが最後のアルカリスで抜け出して独走で初優勝。総合1位のマイヨ・ジョーヌを着る当時スカイのクリストファー・フルームが盤石の走りを見せ、最終的に2年連続3度目の総合優勝を達成することになる。

アンドラにゴールするときは必ず翌日が休息日で、連泊になるので普段よりもちょっと居心地のいいホテルを予約する。原稿を書いたり記者会見に出かけたりして、普段よりも忙しくなってしまうのだが、夕食後に石造りの集落を散歩しているとここにいる幸せを感じた。ツール・ド・フランスの選手か取材記者じゃなければ、アンドラなんてなかなか訪問できるところではない。

文:山口和幸

おすすめコンテンツ

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ