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【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ 第7ステージ:レビュー】苦労人パデュンが超級山岳征服でワールドツアー初勝利「夢なら醒めないで!」
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介フィニッシュまでの10kmはメイン集団による勝負になった。まず、好調バルベルデが前日の言葉通りにミゲルアンヘル・ロペスとエンリク・マスのためにハイペースで牽引を開始。これで集団をふるいにかけると、バルベルデの牽引が終わったのを見計らって今度はポートがアタック。ここに乗ったのがパデュン、マス、セップ・クス。
さらに700mほど進んだところでパデュンがカウンターアタック。クスだけがチェックに動き、ポートとマスは一定ペースで上ることを選択した。
パデュンはなおも攻撃を繰り出す。残り4.7kmで再びアタックすると、ついにクスも付ききれなくなった。
「何度か同じレースを走っていて、彼のことは知っていた。ただ、想像していた以上に今日は強かった。あそこまで強いと、負けても仕方がないと思えるね」(セップ・クス)
後ろでは目まぐるしく展開が動いていたが、そんなことをよそに今大会屈指の上りをこなしてみせたパデュン。最後の1kmはバイクの上で体を揺らして懸命のクライミングだったが、誰からも追撃されることなく独走で上り切った。
「UCIワールドツアー初勝利がドーフィネの最も難しいステージだなんて信じられない。今日はトップ10フィニッシュできれば十分満足だと思っていたけど、それ以上のものが手に入った」(パデュン)
もちろん、個人総合順位だけでその選手の力を図ることはできないが、95位からの逆襲には誰もが驚いたに違いない。ただ、彼のこれまでの人生を思うと、どこかこの結果も自然に思えてくる。
出身地のウクライナ・ドネツクは、2014年から続く同国東部の紛争で壊滅的な被害を受けた。ちょうどジュニアからアンダー23へと上がるタイミングで、地元では戦闘が激化。大好きな自転車を奪われまいと、イタリアへ渡って自力で所属チームを探した。国内の情勢がいまなお落ち着かないこともあり、なかなか故郷へは帰れない日々が続いている。
最近も苦難の連続だった。新型コロナ禍によるシーズン中断に見舞われた昨年は、チームからの給与支払いが滞った。それでも、周囲の心配に対して「必ず後払いしてくれる」と、決してチームを悪く言わなかった。もっとも、未完成である自分の走りを見出してくれたのは、このチームだから。今年だってジロ・デ・イタリアを目指していながら結果を残せずメンバーから外されたが、自らを奮い立たせて別の形でチームに貢献できる方法を模索してきた。
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