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蒸し暑いスタートラインに、全22チームの全出場選手が集結した。残念ながら198人ではない。前夜のチームタイムトライアルで落車、鎖骨骨折したエンリーコ・ガスパロット(アスタナ プロチーム)の姿が、そこにはなかったからだ。早くも1人欠けて197選手となってしまったプロトンが、いよいよ、本格的な2012年ブエルタ・ア・エスパーニャの旅へと走り出した。
グランツール初めての一斉スタートステージには、いつだって、「初めての」という特典がついていくる。初めての大逃げ、初めての峠、初めてのジャージ……。そして初めてのアタックが決まったのは、スタートから7km。ハビエル・チャコン(アンダルシア)、ハビエル・アラメンディア(カハルラル)、ミハイル・イグナチエフ(カチューシャ チーム)、そしてニキ・テルプストラ(オメガファルマ・クイックステップ)という4選手の手によるものだった。
ただこの初アタックは、あっさり正式な「初エスケープ」に昇華したわけではない。なにしろ前者3人が総合首位ヨナタン・カストロビエホ(モヴィスター チーム)からすでに1分以上の遅れを喫していたのに対して、前日のTTT2位チームに属するテルプストラはわずか10秒遅れ!しかもステージ途中に2つ設けられている中間ポイントでは、上位通過3名に6秒、4秒、2秒のボーナスタイムが与えられるのだ(ゴールのボーナスタイムは12秒、8秒、4秒)。テルプストラに数秒を掠め取られては、それこそ一大事。当然のようにモヴィスターは猛追態勢を崩さない。
他の3人にとっては幸いなことに、テルプストラはほんの数キロ抵抗したものの、ついには自らペダルをこぐ脚を緩めた。おとなしく後方へと引き下がり、プロトン内で1日を過ごすことを受け入れた。こうしてチャコン、アラメンディア、イグナチエフが、大会初めてのエスケープへと漕ぎ出した。同時に3人組みは、大会初めての山岳ジャージを争う権利も手に入れた。
ほぼ平坦なステージの真ん中に、小さな3級峠が1つだけ。つまりこの山を先頭で通過さえすれば、自動的に白地に青玉マイヨが付いてくる。だから普通ならば真っ先に山頂を越えたアラメンディアが、山岳ジャージを身にまとえるはずだった。……しかしアラメンディアにルール違反行為があったとして、審判団は降格を決定。代わりに2番目に山頂のラインを越えたチャコンに「首位通過」のポイントと、今大会初めての山岳ジャージが与えられた。
また大会初めての中間ポイント×2も争われ、いずれもイグナチエフがものにした。山岳賞を逃したアラメンディアは、ステージ敢闘賞に指名された。さらにはブエルタ独特の複合賞ジャージは、チャコンが貰っている。つまるところ3人は仲良くご褒美を分け合ったようだ。ただし最大5分ほどのリードを奪ったとはいえ、後方から恐ろしい勢いで追い上げてくるスプリンターチームの勢いを食い止めることはできなかった。ゴール前12km、大会最初の逃げに終止符が打たれた。
ちなみに吸収直前の、2度目の中間ポイントで、ちょっとしたサプライズが発生する。チャコンはすでに遅れ始めていたため、前方には2人しか残っていなかった。つまりメイン集団の選手たちには「3位通過」の可能性が残されていた。これはポイントなら1pt、ボーナスタイムなら2秒に値する。
「そもそもは危険を避けるために、前方ポジションへと上がって来ていただけなんだ。だから目標でもなんでもなかった。でも他の選手たちの位置取りを見て、自分が絶好の場所にいることに気がついた。だからニキ・セレンセンと話しをして、軽く上り気味だったから、トライすることに決めたんだ」
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