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たまらず山岳巧者イゴール・アントン(エウスカルテル・エウスカディ)が落ち、総合4・5位に付けていた「ラボバンクコンビ」のバウク・モレッマとロバート・ヘーシンクが遅れだした。ラスト1kmまでしがみついていたディフェンディングチャンピオン、フアンホセ・コーボ(モヴィスター チーム)も離れて行った。
エナオがひっぱり続け、ゴール前600mでウランが畳み掛けるようにスピードを上げ、そしてラスト400m地点でフルーム自らがアタックをかけると……さらにはコンタドールの脚さえも止まってしまった!
「コンタドールの脱落には驚いた。フィニッシュまでずっと、『彼に追い越されるかもしれない』と考えていたんだ。もしかしたら、この先の難関峠に向けて体力を温存したのかな……?」
結局はコンタドールに追い越されなかったフルームは、こんな風に分析する。ただしコンタドール本人の説明によると、理由は脚の痙攣だという。
「ひどい暑さのせいで、最終峠はずっと脚の痙攣に苦しんでいたんだ。だから自分に言い聞かせ続けた。『おい、アルベルト、行けるところまでついていけ』ってね。かなり上手くやり過ごせたと思うよ。それにしても、フルームのアタックは気に入ったね。アタックや動きが活発に見られてこそ、レースは面白くなる。ボクにもチャンスが巡ってくるんだ」
そう、ツールでのフルームは、ウィギンスの最終護衛役だけに専念した。それでも思わず加速してしまい、うっかりリーダーを置きざりにしてしまいそうになったことも2回あった。だからこそ、ファンもメディアも謎の答えを知りたがっていた。「山でのフルームは、どれだけ強いのか?」。そして今ステージのアタックが、謎の一部を解き明かしてくれたのかもしれない。
とりあえず激坂に関しては――最終1kmは平均勾配10%、最大14%――、やはり「プリト」の方が一枚上手のようだった。ロドリゲスはフルームの加速に瞬時に反応すると、自慢の爆発力を生かしてラスト250mのカーブで先頭に踊り出た。ライン5m前で力を抜いたせいで、優勝を横取りされてしまった第3ステージの反省を生かして、フィニッシュラインまで全速力で駆け抜けることも忘れなかった。
「自分よりも強い選手がいるときには、頭を働かせなきゃならないんだよ。スカイとサクソバンクはすごい仕事をやってのけた。だからボクに選択肢はなかった。賢く立ち振る舞って、好タイミングが訪れるのをひたすら待ったのさ」(ホアキン・ロドリゲス)
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