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「カミングスがアタックを仕掛けたとき、ボクはちょうど前を引いている状況だった。彼は絶好のタイミングで、ボクを罠にかけたのさ」(フアンアントニオ・フレチャ)
すぐさまフレチャとメイヤーが2人で追いかけたが、ほんのわずかな距離を、もはや埋めることができなかった。カミングスはたったの4秒差で逃げの友の追い上げをかわし、40秒差でプロトンを振り切った。デゲンコルブは集団内のスプリント首位=区間7位で満足するしかなかった。緑ジャージまでは7ポイント足りなかった。
「チームは今日も素晴らしい仕事をしてくれた。でも結果が出せなくて残念だ。グリーンジャージを取り戻せなかったから、なおのことがっかりしている」(ジョン・デゲンコルブ)
肩を落とす選手たちを横目に、カミングスは人生最高の勝利を味わっていた。ツールでは第17ステージの下りでひどい落車を起こし、体のあちこちに絆創膏やテーピングを巻きつけながら、なんとかシャンゼリゼまでたどり着いた。そして約1ヶ月には、生まれて初めてのグランツール区間勝利をつかみとった。
「子どものころ3大ツールをテレビで見ては、区間勝利を夢見ていたものさ。でも現実には、チームのための仕事がある。ボクが自分のために区間勝利を取りにいけるチャンスは、限られている。だからこそ、これぞキャリア最大の勝利なんだ。本当に嬉しい。ハードな1年だった。ツールの落車のせいで、ツールとブエルタの間はほとんど何もできなかった。でもブエルタの1週目を何とかやりすごせば、徐々に調子は上がっていくはずだと分かってた」(スティーブ・カミングス)
少々波乱含みだった1日を、総合表彰台を争う4人は揃って40秒遅れの集団で終えた。翌第14ステージからは、いよいよアストゥリアス難関ステージ3連戦。これまでの短い激坂は姿を消し、長く、厳しい、本物の峠が選手たちを待ち受ける。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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