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2007年ジロ総合覇者は、7ヶ月近いブランク(なにしろ現チーム入りしたのは、大会直前の4月27日だ)などまるで感じさせない、力強い走りを見せた。ただし残念ながら、一緒に飛び出してきたロビンソン・チャラプドが、「キラー」を手伝ってはくれなかった。ひたすら背中に張り付いていたかと思えば、さっと前に出て山岳ポイントを横取り。その後はまた、じっと後輪にしがみ付くだけ。
ゴール前3kmを示すアーチを潜り抜けると、スカイの束縛から解き放たれた後方集団が、雪崩のようにディルーカへと襲い掛かった。あわててチャラプドが前を引くのを手伝うも、ときすでに遅し。ディルーカは最後まで歯を食いしばったが、ゴール前300m、集団に飲み込まれていった。スプリントを制したのは、エンリコ・バッタリンだった。
「今日のステージが自分に向いていることは、分かっていた。特に雨が降れば、攻撃合戦が控え目になるからね。だからゴールまで、とにかく体力温存に務めた。勝因は、最後のカーブを上手く攻略できたこと。それから加速を切った。少し遠すぎるかな、とも思ったけど、どうしても先に仕掛けたかったんだ」(バッタリン)
雨に濡れそぼった23歳のバッタリンは、笑顔になることすることすら難しいほどに、体の芯から凍えていた。一方で37歳のディルーカは、がっかりしながらも、この先へと明るい希望をつないだ。
「コロンビアの選手がもう少し協力してくれたら、もしくは下りとゴールの距離がもっと近かったら、一撃を決められていたはずなのに。でも、調子がいいことが確認できた。また、トライするさ。もちろんね」(ディルーカ)
また区間2位と3位にはイタリア人が滑り込んだ。パオリーニがマリア・ローザを守ったのはもちろん、赤(ポイント)・青(山岳)・白(新人)ジャージも全てイタリア人が独占している。
ところで、自転車競技のルールによれば、ゴールから3km以内で落車やメカトラブルにより集団から脱落した場合、アクシデントが発生した時点で所属していた集団と同じゴールタイムが保障されることになっている(頂上フィニッシュやチームタイムトライアルは除く)。各方面からの証言によれば、この日も3km以内で小さな落車(ガラテ、サレルノ、ピション)が発生したという。さらには、すぐ後ろにいたウィギンスが脚止めを喰らったそうなのだ……。
ただし、ウィギンスのタイムは救済されなかった。先頭集団から17秒遅れのゴールが、正式に記録されてしまった。カデル・エヴァンスも、ライダー・ヘシェダルも、ヴィンチェンツォ・ニバリも、自らのアシスト役であるウランさえも、何事もなく無事に先頭集団で1日を終えたというのに!
不可抗力だったのか、本人やアシストたちのミスなのか、それともルール適応の不具合なのか、理由はどうあれ、ウィギンスはタイムを失った。総合2位から6位へと転がり落ち、4位ニバリに3秒リードを付けられた。TTTで上手く撒いたはずのヘシェダル(5位)にさえ、同タイムで並んでしまった。もちろんスカイ陣営が繰り返しているように、「この世の終わり」ではないのだろう。週末にはウィゴの得意な、長距離タイムトライアルが待っている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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