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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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長いレースの果てに、選手たちの肢体に雨が降り注いだ。前夜めくるめく戦闘を繰り広げたマリア・ローザ候補たちは、落車やアクシデントを避けるために、慎重な走りを心がけた。それでもいくつかのチームは、確かな意図を持って、隊列を組んだ。ただし、空模様と同じように、レースとはなかなか計画通りには行かないものである。
前夜のルーカ・パオリーニの勝利が「クラシック風」なら、この日は距離こそがクラシック顔負けだった。全長246km。さすがに298kmのミラノ〜サンレモとまではいかないけれど、フランドルやルーベにほんの少し足りない程度の距離である。勝者のゴールタイムは6時間14分19秒! こんな長い長いステージだけに、スタートから170kmほどは、プロトンはのんびりペダルを漕いだ。7人の逃げをあっさり許して、ピンク色のパオリーニを支えるカチューシャが淡々と集団を率いた。
ゴールまで70kmほどに近づくと、1つのチームが、猛烈な仕事に取り掛かり始めた。ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアが、プロトン前方でトレインを組むと、ハイスピードな牽引を始めたのだ。少し前に勝手に分裂し、ミゲル・ミンゲス、ヨアン・ルポン、ピム・リヒハルト、ジュリアン・ベラールの4人に小さくなっていたエスケープ集団は、5分の貯金を急激に失っていくことになる。
5km進むたびに、タイム差は1分ずつ縮まって行く。ゴール前53km、いよいよタイム差が1分を切ると、またしても前方は分裂。ベラールとミンゲスの2人だけになった。さらにはプロトン内のチームメートに配ろうと背中にたくさんボトルを詰め込んでいたミンゲスが……全てを投げ捨てて、たった1人で渾身の飛び出しをかけた。灰色の雲が低くたちこめ、雨粒が、アスファルトを濡らし始めた頃だった。
雨脚は徐々に強く、視界はどんどん悪くなっていく。それでも遠目に良く映える蛍光イエローのジャージが、確実に前を追い詰めていく。ついにはミンゲスを飲み込み、いくつかのカウンターアタックを引きずり戻した。ゴールまで23km、2級峠の登坂口が近づくと、マルコ・マルカートが痺れを切らして前に飛び出した。再びピラッジィが企てに乗り、シルヴァン・ジョルジュも後に続く。すかさずヴィーニファンティーニは、昨季の山岳王マッテーオ・ラボッティーニを、ストッパー役として前に送り込んだ。なにしろ昨年のパリ〜トゥールを終盤のアタック→逃げで制したマルカトや、昨ツアー・オブ・カリフォルニアの山岳ステージを40kmの独走逃げ切りで制したジョルジュを、先に行かせてしまうのは危険すぎる。
そんなイタリアチームの思惑などお構いなく、ゴール前17.5km、ジョルジュがひとり先を行き始めた。と、ここでスカイプロサイクリングが山岳列車を引き始めた。2012年ツール総合覇者ブラドレー・ウィギンスの露払い役として、カンスタンティン・シウトソウ、セルジオルイス・エナオモントーヤ、リゴベルト・ウランの3人がメイン集団の前方を陣取った。前日と同じ危険――アシストが下がった途端に、ライバルたちが猛攻を仕掛けた――を繰り返さぬために。さらに雨による落車を避けるために。レースにしっかりと錠を下ろした。いわゆるイタリア語でいうところのカテナチオだろうか。
「最後の上りでは、トラブルを避けるために、前方ポジションを守った。チームは非常に良い走りをした。全てがうまく行っていた。チームのメンバーは、数日前から病気に苦しんでいるカタルド以外、みんな非常に調子がよかった」(スカイ監督リュンクヴィスト)
一定リズムで上る集団から、ゴール前10km、黄色い矢が放たれた。今度こそ本物の、ヴィーニファンティーニの最終兵器に違いなかった。ジョルジュをあっという間に追い越して、さらに加速を続けたのは、ダニーロ・ディルーカ、その人だった。
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