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さらに幸いだったのは、2012年ブエルタで集団落車を無視して猛加速を続けたようなチームが(大議論を巻き起こしたが、いまだ真相は不明だ)、今年のジロには存在しなかったこと!ウィギンス&スカイボーイズたちは、さながらチームTTのように前を追い、ゴール前22kmで無事に集団へと合流を果たした。しかも、すぐさまプロトンの前方に陣取ると、「もう2度と問題には巻き込まれたくない」とばかりにチーム一丸となって延々と集団牽引を始めた。ウィギンス本人に至っては、ゴール前2.5kmまで最前列から離れないほどの、念の入れようだった。
「誰もがナーバスになっていた。しかも総合ライダーたち揃いも揃って、ゴール前3kmを切ってもなお、スプリンターチームのように前にいたんだからね。まるでカオスだった」(カヴェンディッシュ)
それでも、最後はスプリントチームに主導権が戻ってきた。36歳の誕生日を迎えたスヴェイン・タフトが引っ張るオリカ・グリーンエッジや、前日の覇者ジョン・デゲンコルブ擁するチームアルゴス・シマノも健闘した。エフデジも最後の仕上げに念を入れた。ただこの日は、オメガファルマが完璧なる仕事を成し遂げた。特に最終発射台ヘルト・ステーグマンは、背中にカヴを隠して、猛スピードで他を蹴散らした。かつてロビー・マキュアンに「ボク専用のTGV(フランスの新幹線)」と大絶賛され、さらには2007年にはトム・ボーネンのツールポイント賞獲得を見事に支えた大男の陰から、カヴェンディッシュはただ飛び出すだけでよかった。
「全てがパーフェクトに進んだ。チームは完璧な仕事をしてくれたし、なにより全力を尽くしてくれた。ボクはひたすらステーグマンの後ろについていくことだけを心がけた。今日みたいにフィニッシュに向かい風が吹いている場合、どうしても速く仕掛けようとしてしまうチームがあるものなんだ。でもボクのアシストたちは、辛抱強く待って、待って、まさに正しいタイミングで加速を切った。どんどんスピードを上げていき、そしてボクを完璧に送り出してくれた。ステーグマンは、ベストの状態なら、史上トップクラスのリードアウトマンだということを証明したね」(カヴェンディッシュ)
ヴィヴィアーニに次いで3番目にフィニッシュラインを越えたブアニは、ハンドルを叩いて悔しがるしかなかった。チームメートたちと十分に喜びを分け合った後、表彰台に上ったカヴェンディッシュは、「108」のゼッケンを高々と天に掲げた。ちょうど2年前の5月9日、この数字を背中につけていたワウテル・ウェイラントは、ジロ第3ステージで命を落とした。当時の所属チームはレオパード・トレックだったけれど、2005年から6年間、ウェイラントはクイックステップの一員だった。
「ボクらのチームにとって、今日は特別な日だったんだ。最高の方法で、哀悼の意を表することができた。この勝利を、天のワウテルに捧げたい」(カヴェンディッシュ)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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