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冬季間にブレシア郊外モンティキアーリの屋内自転車競技場で、ニーバリはしっかりとタイムトライアル練習を積んできた。自らに有利な前半=起伏コースを攻撃的精神で攻略したあと、後半=平坦な直線が続く本格ルーラー向きコースに入ると、今度はひたすら冷静にテンポを刻み続けた。もちろん、この後半こそが、ウィギンスの得意な地形だった。そして、ここからサー・ウィギンスは本格的な巻き返しを開始する。
「後半はボクの脚質にまさしくぴったりだったから、かなりタイムを回復できたよね。本来のペダリングができたし、フィジカルの調子もこれまでにないほど良かった」(ウィギンス)
第2中間計測地点(51.5km地点)では、相変わらずダウセットからの遅れは59秒もあった。ただ実際のところ、26km地点から51.5km地点だけを見れば、失ったのはわずかに7秒だけ。そして勾配11%越えの坂道を上った果てのフィニッシュラインを越えたとき、母国の後輩との遅れは、わずか10秒に縮んでいた。もしかしたら、前半のパンクさえなければ……、区間勝利に手が届いたのかもしれない。そして、出走前に立てた「ライバルたちを2、3分引き離したい」という目標も、達成できたかもしれなかった。
もちろん前半飛ばしたヒルクライマーたちは、後半の苦手な平坦部分では揃ってタイムを失った。それでも、やはり前半の貯金が大きくモノを言った。むしろラスト4kmだけ見ればトップタイムを叩き出した36歳エヴァンスは、ウィギンスから29秒遅れ=総合47秒リードで、あわや人生3度目のマリア・ローザ!?……という好走だった。最終的には約12分後に走りこんできたニーバリが、ダウセットから21秒遅れ、ウィギンスからは11秒遅れというとてつもなく見事な結果を残して、ピンク色のジャージの権利を鮮やかににさらい取ってしまうのだけれど。
「難しいタイムトライアルだった。確かにヒルクライマー向きなコースでもあったけれど、距離が長かったから、エヴァンスやヘシェダルのような選手に有利だと考えていたんだけど」(ニーバリ)
そうなのだ。昨大会をタイムトライアルで勝ったはずのヘシェダルだけが、区間勝者から2分23秒もの遅れ(つまりウィギンスからは望み通り2分13秒秒遅れ)を喫してしまった。総合順位でも、首位ニーバリ、2位エヴァンス(29秒差)、3位ヘーシンク(1分15秒差)、4位ウィギンス(1分16秒差)、5位スカルポーニ(1分24秒差)……の後ろの、総合6位2分05秒と、大きくタイムを空けられてしまうことになった。
最終走者のインサウスティは、わずか1日でマリア・ローザを失った。ただ幸いにも、モヴィスター チームはダウセットと共に区間勝利を祝うことができた。そしてニーバリは3年前に3日間で失ったきりだったばら色の栄光に、誇らしげに袖を通した。
「今日マリア・ローザを着ることができるとは思ってもいなかった。このジャージは、ボクにとっては本当に大きな意味を持つ。2010年に初めて着たときに感じた感動を、再びこうして味わうことができた。だけど大会はまだまだ長い。ライバルたちを決して過小評価してはならない。ボクはあくまでも冷静だし、チームもボクに全幅の信頼を寄せてくれている。今のところは、想像以上に物事が上手く運んでいる。マリア・ローザを、この先はしっかりと守っていく」
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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