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サイクル ロードレース コラム 2013年5月13日

ジロ・デ・イタリア2013 第9ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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トスカーナの丘陵地帯を駆け抜けたジロ一行が、またしても雨に襲われた。濡れた路面と限られた視界の中で、混沌とした戦いが巻き起こった。フィニッシュラインでは2人が空に両手を突き上げ、2人の優勝本命が喘ぎ苦しんだ。結局のところ、勝ったのは1人で、タイムを失ったのも1人だったけれど。

170kmのアップダウンコースは、そもそも大逃げ向きにできていた。前日の長距離個人タイムトライアルで全力疾走した総合勢たちは、それほど厳しい追走は仕掛けてはこないはずだった。当然ながら、スプリンターチームが列車を編成するはずもない。スタート直後に12人の選手が飛び出すと、大きなチャンスに向かって先を急ぎ始めた。

ところが前方集団は、思ったようにタイム差を広げられたわけでもなかった。というのも前方集団には、総合で5分42秒遅れのフアンマヌエル・ガラーテが滑り込んでいた。ジロで総合一桁台の成績を過去3度も収めている強豪クライマーに、総合勢たちは、決して多すぎるアドバンテージを与えてはならない。後方のメインプロトンでは、昨夜マリア・ローザを手に入れたヴィンチェンツォ・ニーバリと、彼を護衛するアスタナ勢が、慎重にタイム差コントロールに務めた。

前方にいた他の11人にとっても、ガラーテの存在は、少々厄介だったはずだ。ステージのちょうど中ほどにある2級峠の上りで、山岳ポイント争いをきっかけに、早くも集団は小さく絞り込まれた。山岳賞5位のロビンソン・チャラプドがアタックを仕掛け、山岳賞3位ステファノ・ピラッジィが後を追う。やはり先頭集団に滑り込んでいた山岳ジャージ姿のジョヴァンニ・ヴィスコンティが、動けずにいる間に、ピラッジィとチャラプドはそのまま前方へと走り去った。そこに、マキシム・ベルコフが、静かに追いついた。

一気に4分の1にまで縮小した先頭集団で、山岳ポイントなどまるで考えていなかったのは、ベルコフだけだったに違いない。だからピラッジィとチャラプドには、続く1級峠でも仁義なき戦いを勝手に繰り広げさせておいた。ちょっとくらい遅れても、無駄な力を使わぬよう一定リズムを刻んだ。「だって雨なら、ボクは下りで差をつけられると分かっていたから」と、28歳のロシア人は冷静だった。そして2度の山頂バトルで力尽きた新山岳賞ピラッジィと宿敵チャラプドが、ペダルを漕ぐ足をほんの少し緩めると……、そのまま一人旅へと飛び込んだ。ゴールまで続く50kmという長い距離を、恐れはしなかった。

「ボクは本来、タイムトライアルスペシャリストだ。でもロードブックを見て、今日は逃げ切りが決まるに違いないと思った。だから、昨日のTTでは、体力を温存することに決めたんだ」

ちょうど前日の個人タイムトライアルほどの距離を、ベルコフはたった1人で走り切った。雨に打たれながら、さらに山を2つ乗り越えて、麗しき古都フィレンツェへと先頭でたどり着いた。プロ入り前の2007年には23以下のヨーロッパ個人TTチャンピオンとなり、2009年にプロ入りしてからは3つのチームタイムトライアルを手にしてきた。ただし個人的な勝ち星をつかみとったのは、プロになってから、正真正銘初めての経験だった!

「でも、最後まで、勝てるかどうか分からなかったんだ。だって後ろがひどく猛スピードで追いかけてきていたから。とにかく自分のベストを尽くした。ラスト2kmは、脚が痙攣したほどだよ」

背後の脅威とは、エスケープ集団の残党、ハリンソン・パンタソやトビアス・ルドビグソンだけではない。有力勢さえも、凄まじい勢いで突進していた。先頭集団が3人に縮小してからは、タイム差も8分近くまで開いていたというのに……。

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