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サイクル ロードレース コラム 2013年5月15日

ジロ・デ・イタリア2013 第10ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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「トンネルがあるのが見えたから、先へ飛び出して、ちょっとリードを奪った。そこから勾配がひどくきつくなるのが分かっていたから、危険を冒さないために、先手を打ったんだ」(ウラン)

黒軍団に変わって空色ジャージのアニョーリがメイン集団を引いたが、ニーバリは特に慌てたりもしなかった。

「ウランのアタックは予測してた。それに総合では十分な差(第9ステージ終了時点で2分49秒)を付けていたから、それほど追走には力を使わないことにした」(ニーバリ)

こんなニーバリが加速を切ったのは、ゴール前4.5kmに待ち受ける中間スプリントポイントの手前。つまりは単純に2位通過のボーナスタイム4秒を取るため……のはずだった。ところが加速の直後に、この日最大の勾配20%ゾーンに突入すると、意外にもライバルたちが苦しみ始めた。1分15秒遅れのロバート・ヘーシンクが真っ先に千切れ、1分16秒遅れのウィギンスがそれに倣い、さらには1分24秒遅れのミケーレ・スカルポーニさえもずるずると後退して行く。途端にニーバリは予定を変更し、攻撃的な本能をむき出しにした。

驀進するマリア・ローザの側では、ドメニコ・ポッツォヴィーボやカルロスアルベルト・べタンクールのアージェードゥゼール・ラ・モンディアル2人組が幾度もアタックを繰り出し、ラファル・マイカやロベルト・キセロフスキー、マウロ・サンタンブロジオもしがみ付いた。この日ばかりは、29秒差の総合2位につけるカデル・エヴァンスも、「他の選手を退けるためには、ニーバリに協力したほうがいいと思ったんだ」とライバルの片棒を持った。「残念ながら、そのニーバリから、ほんのちょっとタイムを失ってしまうことになるんだけど」

ベタンクールがまたしても遅すぎる最終アタックを決めて――ただ今回は、同胞コロンビア人のウランの区間勝利の可能性を奪ってしまいたくなかったから、あえて追いかけなかったのだが――、しかしゴールジェスチャーは見せずに、区間2位に滑り込んだ。その後ろではニーバリがこの日3度目のメカトラにもめげず、スプリントを仕掛け、区間3位=ボーナスタイム8秒をモノにした。

そう、エヴァンスは総合首位と同タイムゴールながら、ボーナスタイムだけで12秒の遅れを喫してしまった。総合でのタイム差は、41秒にまで引き離された。それでもウィギンス(首位から1分08秒遅れ、ニーバリから37秒遅れのゴール、ボーナスタイムを含めると49秒の損失)やスカルポーニ(同様に1分10秒、39秒、51秒)、ヘーシンク(1分16秒、45秒、57秒)の被害に比べたら、満足のいく出来だったと言える。……さらにヘシェダルはこの日20分近いタイムを失い、完全に総合争いからは脱落している。

「今日から早くも、ボクに対しての攻撃が始まると思っていたんだ。でもウィギンスがタイムを失うとは予想していなかった。スカルポーニだって、本人はむしろタイムを稼ごうと狙っていたはずだよ。やはりタイムを失った。一方でエヴァンスは非常に調子がよさそうだ。この先は彼こそが最大のライバルだね。ただ、今日の出来が各選手の本当の実力とは限らない。だって休養日の翌日だったから。ジロはまだ長いし、まだそれほど大差はついていない。危険な選手は、まだまだたくさん存在する。目をしっかり開いて、対応していかなくてはならない」(ニーバリ)

チームリーダーが遅れていることも、マリア・ローザが爆走を続けていることも、一切を構わずに山頂まで独走を続けたウランは、グランツールで初めての区間勝利をもぎ取った。しかもウィギンスを総合で1秒上回って、2分04秒遅れの総合3位に浮上した。……第7ステージの「サー」の落車で、チームがウランに後ろに戻るよう命じなければ、果たしてどうなっていたのだろう。ともかく、コロンビアの26歳も、この先ニーバリにとっては大きな危険となる。全てはスカイのチーム戦術次第だ。

「今朝から、ボクかエナオが、アタックをかける予定だった。ゴール前8kmで飛び出してからは、規則正しいリズムで上るよう心がけた。この勝利に本当に満足している。ただチームのヒエラルキーは、これで変わったりしない。だってブラドレーは調子がいいからね。むしろチーム内で総合のカードが2枚になったんだから、喜ばしいことなんじゃないかな。ボクはただ、スカイの選手が総合優勝することだけを願っているよ」(ウラン)

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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