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ただし、今日のカヴェンディッシュは、チームメートに励まされながら、3級峠を耐え切った。そして下りでは、6人のチームメートと共に再び集団先頭に陣取った。
続く小さな2つの起伏で、またしてもライバルチームたちが加速を畳み掛けた。特にヴィーニファンティーニからは、マッテーオ・ラボッティーニとガットが残り16kmで急突進。カチューシャのジャンパオロ・カルーゾ、モヴィスターのエラダ等々を連れて、すでに1人になっていた先頭ラストラスに追いついた。9人に膨れ上がった集団からは、ラスト7kmでカルーゾが単独でチャンスを試みた。
アシストは2人にまで減っていたけれど、ここでも、オメガファルマのジャージがカヴを連れて追走に力を尽くした。ちなみにプロトン内から総合8位(4分05秒遅れ)ベナト・インサウスティが飛び出そうとしたときだけは……、マリア・ローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ自らが対応に回った。残り4.5kmでまたしてもヴィーニファンティーニからダニーロ・ディルーカが前に出ると、ようやく、キャノンデール プロサイクリングもエリア・ヴィヴィアーニのために追走作業を引き受けた。
「今日はちょっと怒っているんだ。ボクらのチームにばかり仕事を任せておいて、キャノンデールやオリカ・グリーンエッジは、ラスト15kmの一番厳しい時にはなにもしてくれなかった。それなのに、最後だけ勢い良く前に出てくるんだからね」(カヴェンディッシュ)
オリカ・グリーンエッジが先頭でラスト1kmのアーチをくぐりぬけ、キャノンデールが3人がかりでスプリントへと突入したとき、カヴェンディッシュにはもはや支えてくれるアシストはいなかった。しかし怒りと、明晰な状況判断能力と、他人にポジションを譲り渡させる才能と、なにより世界最強の加速力とで、カヴは長い長いスプリントを切った。前にいた7人など瞬時にごぼう抜きにして、300mを一息で駆け抜けた。
「今日は『スプリントしたくない』ってあらかじめ言っていたんだ。ステージは長かったし、ゴール近くに決して簡単ではない峠が待ち構えていたから。でも監督が、チームメートに引くように命じた。そして彼らは、それを1日中、100%の力で続けてくれた。山でボクを助け、追走のために加速を続けてくれた。ボクがスプリントしたくないって言っているにもかかわらずね!そしてボクの仕事は、スプリンターだから……。チームメートたちをがっかりさせるわけにはいかなかったんだ。チームは完璧だった。チームメートたちを誇りに思うよ」(カヴェンディッシュ)
カヴの今大会4勝目、プロ通算101勝目を見届けたジロ一行は、翌日から勝負の最終週へと突入する。ウィギンスとヘシェダルは消え去ったが、マリア・ローザ争いはこれからが本番だ。
「ジロは決して簡単ではない。たとえウィギンスが抜けたとしてもだ。エヴァンスとのタイム差はいまだ非常に近いし、他にもライバルたちが控えている。警戒し続けなければならない。次のステージでボクがアタックをかけるかどうかは、まだ分からない。調子にもよるし、天候にもよるね。天気予報の知らせは良くないみたいだけれど、とにかく、気温が下がりすぎないことだけを願ってる」(ニーバリ)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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