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1956年に冬季五輪の舞台となったコルチナ・ダンペッツォは、まるでスキーシーズン真っ盛りのように、深い雪に覆われていた。同じ年のジロでは、伝説的な大雪となったモンテ・ボンドーネを、シャルリー・ゴールが制した。もちろん総合優勝も果たしている。そして「ドロミテの宝石箱」と呼ばれるこの町から、道は本格的に上り始めた。ゴールまで残すは22.5km。先頭の4人は、2分30秒差で2級峠トレ・クローチ(3つの十字架)山へと飛び込んだ。後方プロトンでは、ピーター・ウェーニングがアタックを仕掛け、数選手が後を追っていた。
そのもっと後ろでは、雪のように白いジャージを2秒差で追いかけるカルロスアルベルト・べタンクールが、ひどく奮闘していた。登坂直前に運悪くパンクに襲われ、その後さらに自転車交換を余儀なくされたせいだった。しかも新人賞ライバルのラファル・マイカを擁するチーム サクソ・ティンコフが、ここぞとばかりに加速を見せた。ただしチームメートに引かれ、チームは違えど母国は同じウィルソンアレクサンデル・マレンテスから背中を押され、小柄なヒルクライマーは無事にメイン集団へと復帰を果たした。
ちなみに同じ頃、青いジャージの男さえ、飛び出しを試みていた。今大会幾度となく大逃げを打ち、第9ステージ終了後からマリア・アッズーラを肌身離さず着てきたステファノ・ピラッジィは、昨夜の時点ですでに山岳賞を確実にしたというのに……!エスケープの生き残りブルット、追走ウェーニングに続いて、2級峠で3位通過=3pt追加を達成する。そしてこのポイントが、ピラッジィにとって、今大会で手にした最後の山岳ポイントとなる。
「シーズン開幕時から、山岳ジャージを獲る、ってチームに断言していたんだ!もちろん区間勝利が欲しかったけれど、でも本当に、このジャージには満足さ!明日はちょっとした青ジャージのお披露目パレードだね」(ピラッジィ)
ウェーニングの後を追いつつ、遅れてやって来たジャンルーカ・ブランビッラやエロス・カペッキと共闘を組もうにも、ピラッジィはゴール前10kmほどで振り落とされてしまう。またブルットに追いつき追い越し、先頭に立ったウエーニング、ブランビッラ、カペッキの3人も、激しさを増していく雪の中で、少しずつ脚が鈍っていった。それでもカペッキだけは、なんとか最後まで粘り続けた。
しかし、雪よりも、あらゆるライバルたちよりも強く、ニーバリが見事なる攻撃を決めた。ゴール前3.5kmまで、アシスト3人に完璧に守られていたマリア・ローザは、何度か畳み掛けるように加速すると、単独で頂上を目指し始めた。全ライバルを振り払い、カペッキをあっさり追い抜いた。自らの総合優勝を、完璧なものにするために。いや、伝説にするために。
「雪が、この勝利を、とてつもない英雄譚に変えてくれたね。それに、昨日の出来事に関して(ディルーカのドーピング陽性)、なにかメッセージを送りたかった。本物の自転車レースとは果たしてどんなものであるのかを、全ての人に見せたかった。今日沿道に来てくれた人々に、感謝の言葉を捧げたい。最後の上りでは、ファンたちの熱気を感じられた。転ばされてしまうかもしれない、と怖くなったことも2度ほどあったけど。とにかく、こんな素晴らしい勝ち方をすることができて、本当に、嬉しい」(ニーバリ)
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