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サイクル ロードレース コラム 2013年6月30日

ツール・ド・フランス2013 第1ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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イル・ド・ボーテ(美しき島)は、あますところなくその美しさを見せつけた。夏の光の中で、海と空の青と、波の白、赤レンガ色のハーモニーがきらきらと輝いた。緑の野山の中を色とりどりのジャージが駆け抜けた。赤と白の日本ナショナルカラーを身にまとった新城幸也は、ボーマイヨ(カッコいいジャージ)を世界190カ国にたっぷりと披露した。記念すべきツール・ド・フランス100回大会の第1ステージが、コルシカ島で、なにやら楽しげに幕をあけた。

ただし、1日の終わりには、全てがカオスに包まれることになるのだ。手付かずの自然が残る島には、高速道路や抜け道といったものは存在せず、町と町をつなぐ一本道――しかも気分が悪くなるほどに曲がりくねった道だ――以外に選択肢はない。そんな四方八方を塞がれた状況の中で、まっ先に起こったハプニングは、8kmのパレード走行中に、総合優勝大本命クリス・フルームが自転車から転がり落ちたこと。幸いにも大事には至らなかったが、ゼッケンナンバー「1」は、つまり100回目の大会で名誉ある落車第一号というわけだ!

ゼロkm地点のアタックは、グランツール最初の通常ステージの、いわばしきたりのようなもの。ジェローム・クザンの力強い加速に、ラース・ボーム、フアンアントニオ・フレチャ、シリル・ルモワンヌ、フアンホセ・ロバトという強力ルーラーたちが乗った。今大会最初の山岳ポイント(4級)では、やたらと緊迫した戦いを繰り広げた。そして栄えある初日の山岳賞マイヨ・ア・ポワ・ルージュをロバトが競り落とすと、エスケープ集団の気が少々抜けたのだろうか。なにやら逃げに対するモチベーションが揺らぎ始めた。

こうして2分半ほどあったリードは40秒にまで縮まった。そこから奮発して3分40秒差へと再び開くも、またしてもぎりぎり15秒差ほどにまで迫られて……、我慢できずにクザンが単独で仕掛けた。すると他の4人も意欲を取り戻し、今度は4分差の壁さえ超えた。奇妙に繰り返された伸びたり縮んだりというタイム差ゲームも、ただし、予想通りの幕切れが待っているだけだった。だって英国チャンピオンジャージからマイヨ・ジョーヌに着替える予定のマーク・カヴェンディッシュと、そのアシストたちは、「5分以上は絶対に与えない」と決めていたのだから。スプリンターチームたちだって、これに関しては同意見だった。だから海風の吹くバスティアへと近づくに連れて、じわじわとスピードを上げ、隊列を組み上げ、確実に5人を追い詰めていく。ゴール前37kmで、集団はひとつになった。

華やかな大集団スプリントを夢見ていたツール一行に、異変が起こったのは、スプリントトレインが最終10kmのアーチへと迫っていた頃。「バァン」という破裂音にも似た音が、ゴールエリアに鳴り響いた。数週間前には、コルシカの過激独立派が停戦撤退を宣言していた。何匹もの爆発物探知犬が、ステージの朝に、いたるところを入念に嗅ぎまわっていた。だからフィニッシュライン横の実況席でJ SPORTS生中継を解説中だった栗村修氏は、「えっ、本当に爆発!?」と思わず飛び上がってしまったと言う。実際のところは、オリカ・グリーンエッジのチームバスが、ゴールのアーチに衝突した音だった。

他のすべてのチームバスが、かなり早い時間帯にゴールエリアに到着していたから、どうしてオリカのバスだけがあんな時間帯までふらふらしていたのかは定かではない。もちろん、最大の要因は、上記に挙げたように「逃げ場のない1本道」なのだろう。ちなみに事故当時、ゴールアーチの高さは4m50cmに設定されていたというが、アーチは上下スライドが可能なタイプ。ゴールライン脇の担当者にひとこと声をかけて高さを調節してもらうだけで、あっさり潜り抜けられるはずだった。バス運転手は高さを見誤ったのかもしれない。

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