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そして最終出走チームのレディオシャックが、26分25秒28(29秒遅れ)でフィニッシュラインを超えた瞬間、ヤン・バークランツの王座失脚と、ゲランスの総合首位が確定した。オーストラリア人としてはフィル・アンダーソン、ブラッドリー・マギー、スチュアート・オグレディ、ロビー・マキュアン、カデル・エヴァンスに並ぶ、史上6人目のマイヨ・ジョーヌ。もちろんオーストラリア籍チームとしては史上初めてだし、本人にとっても生まれて初めての名誉あるリーダージャージ獲得だ。ホワイト監督がUSポスタル所属時代のドーピングを認め、辞職→復職という経歴を持つせいで、メディアからは辛辣な質問も飛び出した。それでも童顔33歳の、満面の笑顔が曇ることはなかった。
「昨日はチーム全員で努力したのに、表彰台に上れたのはボクだけだった。だから今日、チームメート全員と一緒に表彰台に上れたことは、はるかにスペシャルだったんだ。ボクら9人全員が表彰台で祝福を受けた。しかもイエロージャージがボーナスとしてついてきた。マイヨ・ジョーヌを着ること、これは自転車選手にとって最高の成功さ。ツールとは世界中に名をとどろかせている自転車レースであり、マイヨ・ジョーヌはそのシンボル。区間を勝ち、黄色ジャージを着ることは、自転車選手にとっては人生をかけた夢なんだ。ほんの一握りの選手だけが、その夢をつかむチャンスを持つ。そしてボクは、そんな名誉を得ることができた。本当に興奮しているよ」(ゲランス)
総合優勝&表彰台を争う面々の中で、最も好パフォーマンスを繰り出したのは、やはりモナコ在住組(例えばリッチー・ポートやクリス・フルーム)を幾人も抱えるスカイ プロサイクリングだった。オリカからの遅れはたったの3秒。おかげでアルベルト・コンタドール擁するチーム サクソ・ティンコフから6秒、ユルゲン・ヴァンデンブロックのロット・ベリソルやライダー・ヘシェダルのガーミン・シャープから14秒、アレハンドロ・バルベルデのモヴィスター チームから17秒を奪い取った。
「本当に満足できるタイムだし、この結果に満足している。個人的にも、すごく調子がいいんだ。先頭を少し長めに引くことができたし、山を前にして、非常に上向きの調子になっている」(フルーム)
ただし密かなる目標だったマイヨ・ジョーヌ獲り――ガーミンのデーヴィッド・ミラーも狙っていたが――は、ほんのわずかな差で失敗してしまった。ちょっとだけ、がっかりしているんだとか。
一方で2011年大会王者カデル・エヴァンスやティージェイ・ヴァンガーデレンの所属するBMCレーシングチームは、早くもフルームから23秒、コンタドールから17秒もの遅れを喫した。「ボクらチームにとっては得意種目のはずなのに……。どうして上手く行かなかったのか分からない。完全なる失敗だ」とエヴァンスは嘆く。カチューシャ(スカイから25秒遅れ)やレディオシャック(同じく26秒遅れ)に至っては、さらに大量のタイムを失ったけれど……。それぞれのエースであるホアキン・ロドリゲスやアンディ・シュレクが「TT弱者」かつ「山岳巧者」であることを考えれば、それほど肩を落とすこともなさそうだ。
新城幸也が通常の緑スーツを着て走った代わりに、ピエール・ローランがチームに赤と白の色味を添えたチーム ユーロップカーは、首位オリカから1分13秒遅れでゴール。総合5位以内を狙うローランにとって、このタイム損失がどう影響するか。
「100回大会という記念の年に、山岳賞ジャージという、マイヨ・ジョーヌに次ぐ人気ジャージを着られたことが本当に嬉しい。この先パリまで守っていけるかどうか……。それは今からの展開次第だ」(ローラン)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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