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「この時点では行けるかもしれない、と思った」という新城は、逃げの間中、ずっと「行けるかな、行けないかな、行けるかな……」と考え続けていたそうだ。しかし「ここからの4人のペースが、思うように伸びなかった」し、後方プロトンの追い上げは徐々に激しくなっていく。前夜シャンパンでお祝いしたマイヨ・ジョーヌ擁するオリカ・グリーンエッジや、オメガ&ロット&アルゴスのスプリンター集団が、猛烈なスピードアップを始めていたのだ。いつしか前方は連帯感を失い、抜け駆けアタックが相次いだ。
そして強い向かい風の中、ラスト12km、ついに20歳のルツェンコと、「デヘントは捨ててルツェンコだけをマークしていた」レザだけが、先へと飛び出した。メイン集団とのタイム差は、すでに20秒しか残っていなかった。
「ボクが一番後ろについている時だったんです。ケヴィンは前にいたから、そのまま飛び出していった。そしたらデヘントがブレーキをかけた。だからボクも……。もう30秒を切っていたから、絶対につかまると思ったんです。だから、『もう今日はいいや、次のために力を残そう』って切り替えました」(新城)
こうしてデヘントと新城は、おとなしく後方へと引き下がった。レザとルツェンコは最後まで悪あがきを続けたが、やはり4kmを残したところで夢がついえた。第1ステージ以来輝ける機会を与えられなかったピュアスプリンター軍団の、殺気立った勢いに、飲み込まれていった。
「しょうがないですね。やるべきことはやったし、力も出し切った。でも……、もうちょっと上手くできたかな。不満というよりは、何かもっと違うやり方があったんじゃないか、何かもっとできたんじゃないか、って思うんですよ。だって2人いたんですから。かと言って、ボクらのどちらか片方が引き過ぎたら、残りの2人が引かなくなる。難しいですね。どうしたら一番よかったのか、ちょっと答えが見つけられないですね。ボクはどうすべきだったのか、答えを教えて欲しいです」(新城)
この問いを、チームの監督にぶつけてみた。「うーん……、今日はどうしようもなかったと思うよ。ただ、少しでも逃げ切りの可能性を増やしたかったのなら、4人体制を崩してはならなかった。2人になった時点で、地形や向かい風を考えると、もはや死んだも同じ。つまりアタック合戦などせずに、4人でギリギリまでリレー交替を続けるしか、方法はなかったはずなんだ」(フリカンジェ監督)
「いや、何か手を尽くしても、いずれダメになることは明白だった。今日は逃げ切りは不可能だったのさ。とにかく30秒差になった時点からのアタック、分裂では、遅すぎたことだけは確かだね。今のユキヤがやるべきことは、体力回復に励んで、次に備えること。また逃げるチャンスを与えるよ。もちろん明日は無理だけど」(モッティエ監督)
メイン集団ではゴール前16kmで大集団落車が発生した。おかげでユーロップカーのリーダー、赤玉ローランが、一瞬後ろに置き去りにされた。さらにゴール前500m前後の緩やかな左カーブでも、スプリントの真っ最中に、195人中152人が足止めを食らうというとてつもなく大きな将棋倒しが起こった。またしてもローランが軽く転倒し、むしろ今年こそは表彰台に上りたいユルゲン・ヴァンデンブロックが左ヒザを激しく打ち付けた。
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