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暑かった前日が嘘のような、肌寒い朝だった。2日前の集団スプリント時のトム・フェーレルスの落車は、いまだツール一行内にざわつきを残していた。個人タイムトライアル走行中には、マーク・カヴェンディッシュに対する「フーリガン的」嫌がらせが起きた。審判団は改めて「フェーレルスは自分自身のミスで落車したのであって、カヴェンディッシュに一切責任はない」と強調した。フェーレルスの地元オランダで開催されるツール直後のクリテリウムは、「いや、カヴの態度は許せない」と英国チャンピオンの出場取り消しを発表した。意見が真っ二つに割れる中、肝心の本人は、極めて機嫌よくスタート地へと乗り込んできた。
お日様が雲間から顔を現し、気温がぐんぐんと上がり始め、スプリントステージは始まった。スタート直後にフランチェスコ・ガヴァッツィ、ロメン・シカール、マヌエーレ・モーリ、フアンアントニオ・フレチャ、アントニー・ドゥラプラスの5人が逃げ出した背後では、プロトンは決してのんびりムードに浸ったりしなかった。たっぷり210kmをかけて獲物を追い詰めればいいはずなのに、スプリントチームは気を抜かずに高速リズムを刻み続けた。なにしろ2013年大会はいまだ10ステージも残っているというのに、スプリントチャンスはこの日を含めてわずか3回のみ!だから区間勝利獲りも、マイヨ・ヴェール用ポイント収集も、絶対に失敗するわけにはいかなかったのだ。こうして追い風の助けも得て、1時間目の走行時速は47kmを超えた。
当然ながら中間スプリントも、マイヨ・ヴェールの可能性を追い求める数選手で、いつも通りに激しく争われた。カヴェンディッシュ(6位通過)とアンドレ・グライペル(7位通過)は駆け引きを繰り広げ、緑ジャージ姿のペーター・サガン(8位通過)はきっちり付いていく。ちなみに今ステージを終えた時点で、ポイント賞首位サガン(307pt)と2位カヴェンディッシュ(211pt)の差は96pt。
レースは最後までスピーディに進んでいった。エスケープは一時は8分45秒差を許されるも、オメガファルマ・クイックステップやロット・ベリソル、チーム アルゴス・シマノの無慈悲な追走作業で着々とタイム差は縮まっていく。後方からのプレッシャーに耐え切れなくなったエスケープ集団から1人落ち、2人落ちて……。最後にはフレチャだけが必死の抵抗を続けるも、ゴール前6km、やはり強制的にメイン集団へと引きずり下ろされたのだった。
吸収と同時に、アルベルト・コンタドール擁するチーム サクソ・ティンコフが5人がかりで猛加速を切る。これが今ステージで唯一、マイヨ・ジョーヌをヒヤリとさせた瞬間だったかもしれない。スプリンターたちの圧力に押されて少々後方に押しやられてしまったクリス・フルームだが、幸いにもイアン・スタナードに連れられて、前方へと立ち戻ってきた。
「スプリントステージの最終盤は緊張感は一気に上がる。特にラスト2kmは、押し合い、へし合いで、ストレスが半端ない。必ず好ポジションへと付けていかなきゃならないんだ。幸いにも今日のボクは、チームメートのおかげで上手く切り抜けることができた。落車は……見なかったけれど、背後で音を聞いた」(フルーム)
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