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「ツールの区間を1つ勝つことだけでも難しいことなのに(2011年第8ステージ)、2回も勝てるなんて凄いよ!勝利の瞬間に感じた気持ちを、言葉で表現するのはすごく難しいけれど、とにかく、スペシャルな気分だった。あの感激は、ボクの心の中に、一生残る大切な宝物だ」(ファリアダコスタ)
モヴィスターにとっても、ポルトガル人にとっても、今大会、待望の1勝目だった。一方では2位から4位までを独占した失意のフランス勢にとって、残るチャンスはあと5日のみ。ちなみに地元フランス勢が勝利を1つも上げられなかった大会は、現在までの99回で、1926年と1999年の史上2回しかないのだ。
後方プロトンでは、総合勢たちが超高速バトルへと飛び込んでいた。きっかけを作ったのは、ホアキン・ロドリゲス擁するカチューシャ。今大会ここまで鳴りを潜めてきたロシアチームが、突如として3人で前方を引き始めたのだ。さらには、上り開始と共に、真打「プリト」が――大会序盤は落車のせいで調子もタイムも落としていた――強烈な加速を披露。するとあっという間に、マイヨ・ジョーヌ集団は8人へと絞り込まれた。
「今週はボクらチームにとってとても大切な週だ。今攻撃しなくて、いつ攻撃するっていうんだい!?難関山岳が始まったんだから、アタックしなきゃ。調子はいいからね。アルプスで自分の力を見せ付けたい」(ロドリゲス)
ロドリゲスのイニシアチヴに乗ったのは、クリス・フルームとリッチー・ポートのスカイ2人、アルベルト・コンタドールとロマン・クロイツィゲルのチーム サクソ・ティンコフ2人、アレハンドロ・バルベルデとナイロ・クインターナのモヴィスター チーム2人、バウク・モレッマ。ただし、ここから猛攻をかけたのは、むしろコンタドールの方だった!
「ボクにとって、総合2位だろうが10位だろうが、大きな違いはない」と、コンタドールは休養日に改めて語った。グランツール5回制覇の大チャンピオンは、オール・オア・ナッシングの精神で、最後まで総合優勝に向かって攻撃を続けるというのだ。その言葉を裏付けるように、上りで3度、アタックを打った。アシスト役クロイツィゲルも畳み掛けるように高速リズムを刻んだ。一時はマイヨ・ジョーヌを守るポートを、後方へ振り落とした……!
ただし、それも1回限り。むしろフルームが「サクソやモヴィスターが仕掛けた10回以上もの攻撃を、リッチーが全て上手く潰してくれた」と大絶賛したように、この日のオーストラリア人は、我々のよく知る頼もしい山岳アシストの姿を取り戻していた。
コンタドールは諦めなかった。上りがダメなら、下りがある。ダウンヒルの苦手なアンディ・シュレクを陥れようと、2011年大会でも何度か披露したように、信じられないようなスピードで坂道を駆け下りていった。何度も何度も加速を試みた。ライバルに言わせれば「危険をまるで顧みずに」。そして、ベロキが選手人生を実質上断たれたいわく付きの山道で、コンタドールもアスファルトに足を取られた。
「普段なら、あんな風に滑って転んだりしない。でも舗装の表面が溶けていて、自転車の車輪が引っかかってしまったんだ。地面に叩きつけられた。幸いにも、どこも痛めてはいないし、すぐに自転車に飛び乗ることができたけどね」(コンタドール)
目の前でひっくり返ったスペイン人をよけようと、慌ててハンドルを左に切ったフルームは、道路脇の土の出た部分にほんの少しだけ乗り上げた。ただし、ちょうど10年前のランス・アームストロングのように、草むら横断を強いられたわけではない。ちょっと地面に足をついただけで、数秒で本来のルートである舗装道路を走り出した。メイン集団の仲間たちからほんの少し後れを取ったが、護衛役のポートが待っていてくれたおかげで、何事もなく、(コンタドールと共に)集団復帰を果たしている。
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