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サイクル ロードレース コラム 2013年8月27日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013 第3ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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「後方で落車があったことは無線で聞かされたけれど、前方だって緊張感でいっぱいだった。とにかく前方に留まることが、落車や分断から避けるための最善の方法だった。あんな状況になったのは、いたって当然のことだよ。だって橋の通過は、まるでクレイジーだったから。道が真ん中で分けられていたけど、あれはボクらを殺すつもりだったのかな。ガリシアは……バカンスに来るなら美しい場所なんだけど」(バルベルデ)

ため息が出るほど見事な風景の中で、3つに分断した集団は、凄まじい追いかけっこを繰り広げた。カハルラルの選手がパイロンに引っかかって落車し、さらに対向車線を走る一団を見咎めて、ファビアン・カンチェッラーラが減速を呼びかけたこともあった。しかし事態はそう簡単には収拾しなかった。40秒ほどの遅れを取り戻すために、ベルキンやエウスカルテルは前方集団のアシストを後ろに下げてまで、執念深く追走を続けるしかなかった。

島を抜け出して、橋の復路を無事に終えたころ、ようやく前方集団は落ち着きを取り戻していった。ゴール前20km、プロトンは再びひとつになった。

とてつもないカオスを抜け出した後、3級峠へと真っ先に飛び込んだのは、オリカ・グリーンエッジの隊列だった。落車分断で体力を使い果たしたゲランスの代わりに、マイケル・マシューズで勝利を狙おう、そう作戦変更しての特攻だったという。しかし山は思いのほか長かった。ラスト3kmではフアンアントニオ・フレチャがアタックを仕掛け、続いてイタリアチャンピオンのイヴァン・サンタロミータが飛び出したが、いずれも最後まで勢いは持たなかった。

仕掛けるべき最高のタイミングは、どうやらゴール前1kmのアーチの下だった。しかも勝負を決める一撃を振り下ろしたのは、上れるスプリンターでもパンチャーでもなく、オールラウンダーのクリストファー・ホーナーだった。

「山の麓から上部まで、次々とアタックがかかったね。ボクも加速した。そして後ろを振り返ったときに、ほんの少し、距離が開いたのが見えた。だからとにかく頭を下げて、フィニッシュラインまで全力で走ることに決めた。でも、あまりにもアタックが多かったものだから、最後の選手を追い抜いた時に、果たして彼が最後の1人なのかどうか100%確信が持てなかった。チームカーの無線はひたすら『ゴー!ゴー!』と叫んでた。だからとにかく夢中で走った」(ホーナー)

夢中でたどり着いたフィニッシュラインを、ホーナーは一番に駆け抜けた。41歳でつかんだ、生まれて初めてのグランツール区間勝利だった。正確に言えば41歳と307日で……、1963年ツール・ド・フランス第9ステージを41歳95日で制したピノ・セラミを追い越して、「グランツール最年長区間勝者」へと踊り出た!

区間勝者に与えられる10秒のボーナスタイムのおかげで、マイヨ・ロホを身にまとう栄誉さえ手に入れた。もちろん「グランツール最年長リーダージャージ」のタイトルも同時獲得だ。区間勝利がわずか212日の記録更新だったのに対して、こちらは3歳も大幅に塗り替えている。だって2007年ジロ・デ・イタリアで、アンドレア・ノエがマリア・ローザに袖を通したのは38歳。ホーナーに比べれば、まだまだひよっ子だったから。

「ボクは自転車レースが大好き。自転車のトレーニングが大好きなんだ。この年齢になると、『自転車に乗るのは、もしかしたらこれが最後になるかもしれない』って、毎日のように考える。落車がすなわち、『もはや次はない』という意味に十分なりえるからね。だから毎日集中し続けることや、モチベーションを高く保つことは簡単なんだ。長い経験のおかげで、勝つことがどれだけ難しいことなのか理解してる。多くの選手たちがレースをやめて行く中で、勝者になることがどれだけ奇妙なことなのかもね。でも年を取れば取るほど、ボクはこのスポーツをもっともっと好きになる。だから続けていきたいんだ」(ホーナー)

41歳の3秒背後では、33歳バルベルデと34歳ホアキン・ロドリゲスがスプリントを仕掛け、それぞれ2位6秒と3位4秒のボーナスタイムを手に入れた。28歳ヴィンチェンツォ・ニーバリは同タイムゴールで満足し、ホーナーから3秒差で、一旦マイヨ・ロホを脱いだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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