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2012年9月末、栄光の世界チャンピオンジャージを身にまとって以来、ジルベールは1度も勝利の喜びを味わえずにきた。エネコツアーの落車でヒザを痛めてはいたけれど、どうしてもアルカンシェル姿で両手を天に上げたい。それにフィレンツェでの世界選手権へ向けて、調子を上げて行く必要もある。一方のスティバールは、そのエネコツアーで区間2勝+総合を力強く勝ち取り、絶好調の時を過ごしていた。それぞれの思惑を胸に秘めて、2人は協力体制を組んだ。
カンチェッラーラはしばらくして、牽引をあっさり中止した。慌ててオリカ・グリーンエッジが総動員で追走隊列を組んだ。アルゴスも加速に手を貸したし、しまいには2人のベルギー関係者に刺激されたか、ロット・ベリソルも猛然と前を引き始めた。ただガーミンだけは、作業に加われなかった。タイラー・ファラーがメカトラに襲われ、上り坂でダニエル・マーティンが落車するという、二重の災難に見舞われたのだ。全てのスプリンターチームにとっての不運だった。
「ラスト10kmは、ひどくテクニカルな道が続くことを知っていた。まさにボク向きだった。集団が逃げをつかまえるのは難しいだろうと予測していた。カンチェッラーラも努力したけど、ギャップを埋められなかったしね」(スティバール)
トニー・マルティンの奮闘に大いに刺激されたというベルギーチームのチェコ人は、アメリカチームのベルギー人と共に、ゴール前5kmでの6秒差を、残り3kmでは12秒へ、2kmでは17秒へと広げて行った。ラスト1kmのアーチは、後方プロトンから12秒リードで潜り抜けた。
「最終1kmは、冷静でいるよう心がけた。プロトンが背後に迫っていることを感じていた。一か八かの賭けだと分かっていた」と語るスティバールが、真っ先にスプリントを切った。後方からは待ちきれない選手たちが思い思いに加速を仕掛け、恐ろしいカオスとなって2人に襲い掛かりつつあった。「ゴール前ギリギリで、ようやく彼の背中から飛び出した」とジルベール。フィニッシュライン25m手前で、突如スプリントに加わった。そして2人は、思い切りハンドルを投げた――。
「1センチ差だろうが、1ミリ差だろうが、そんなのどうでもいい。だってボクが勝ったんだから!」(スティバール)
ロードに完全転向してから3シーズン目。「シクロクロススペシャリスト」の称号をいつまでたっても脱ぎ捨てられずにいた27歳は、2度目のグランツール参戦で、ついに待望の初区間勝利を手に入れた。ほんのタイヤ半分ほどの差で負けたジルベールも「調子の良さが確認できた。この先に希望がつなげるさ」と、前を向いた。
またしてもチャンスを逃したスプリンターたちは、1秒遅れの集団でフィニッシュラインに雪崩れ込んだ。総合争いの選手たちにタイム変動はなく、「勝つこと」以外には興味のないカンチェッラーラは、3分27秒遅れでゆっくりと1日を終えた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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