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サイクル ロードレース コラム 2013年9月15日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013 第20ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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上体を揺らしながら、必死で、22歳の若者は高みを目指した。ほんの数キロ後方……いや、たったの数百メートル背後では、すでに、マイヨ・ロホを巡る仁義なき戦いが勃発していた。山の麓で保持していた5分のリードは、急速に縮まっていく。

「アングリルのファンたちの熱気が、後押ししてくれたんだ。差は1分20秒ほどだと考えていたけど、まるで確かじゃなかった。ただゴール直前の軽い下りで、ニュートラルサービスカーが自分の後ろについているのが見えた。そこで、ああ、ボクが勝ったんだな、と理解した。ただただ信じられない。アングリルっていうのは、……伝説的な山だからね」(エリッソンド)

両腕を精一杯大きく広げて、別名「ケニバル」は、人生でいちばん大きな勝利をつかみとった。全ての苦悩から解放された瞬間に、涙が溢れ出した。後続との差は1分20秒ではなく、わずか26秒だった。

それにしても、フランスの若手世代にとっては、大漁のブエルタとなった。21歳ワレン・バルギルが2勝、25歳アレクサンドル・ジェニエ、そして22歳エリッソンドと、区間勝利は計4勝。25歳のエデが山岳賞、そして23歳のティボー・ピノが総合7位。……もしも新人賞というものが存在していれば、ピノが白いジャージを着ていたはずだった。

36歳のティラロンゴは、アングリルで、リーダーのためにペダルを踏み続けていた。かつてはアルベルト・コンタドールの名山岳アシストとして働き、1年前にもチームの枠を超えてスペイン人の復活優勝の背中を押した大ベテランは、前方でニーバリの合流を待っていた。カチューシャがジャンパオロ・カルーゾとダニエル・モレーノの強烈な牽引で、メイン集団が10人ほどに小さく絞り込まれた、その時だった。ゴール前7km、「山小屋カーブ」ゾーンで、ニーバリが強烈なアタックを打つ。

「まずは最終峠への下りで、アタックを仕掛けた。だってグリブコが前にいて、彼の後ろについていくことができたから。それからアングリルでアタックを打った。だってティラロンゴが前にいて、彼と一緒に走ることができたから。フグルサングに関しても、同様だった」(ニーバリ)

ゴール5kmのアーチの下で、ティラロンゴと合流したニーバリは、さらに4km直前にフグルサングの助けを得る。すでにバルベルデは脱落気味だった。しぶとくしがみ付いてきた老兵ホーナーと34歳プリトに対して、水色のジャージは包囲網を敷いた。数的有利を生かして、攻撃体制を整えたニーバリは、そこから1人で強気で攻め立てた。20%の「天竺ネズミ」ゾーンで1度、23%超の「山羊」ゾーンで数度。畳み掛けるように、力を振り絞ってスピードを上げた。

「アングリルでの最初のアタックは、ホーナーをテストするためだった。ボクについてこれる脚があるかどうかを、見るためだったんだ。それから、フィニッシュラインが近づいてきてからは、彼を倒すために、何度もアタックをかけた。何度も、何度も。ある時点で、ホーナーを見たときに、ひどく苦しんでいるようだった。だから、もしかしたら行けるかもしれないと思ったんだ……。でも、ボクだって苦しんでいた」(ニーバリ)

28歳と、自転車選手としてはまさしく脂の乗った世代にいるニーバリの攻撃に、ホーナーは何度でも耐え切った。たとえ一旦は少し遅れても、すぐに追いついてきた。バルベルデやロドリゲスは、いつの間にやら、力尽きて消えていったというのに。あと1ヶ月もすれば42歳となる老兵は、決して崩れることがなかった。それどころか、21%超の「エル・アヴィル」ゾーンで、逆に強烈なアタックを打ち返してきた!

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