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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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もちろん、1チーム5人という小さな単位での参戦形式だから、近年世界各国のレースで幾度となく見られてきたような、豪華な長い列車が仕立て上げられたわけではない。漆黒軍団スカイのローラー車が走ることもない。ガーミンシャープやオメガファルマ、キャノンデール、サクソバンク・ティンコフ、さらには日本が誇るブリジストン・アンカーが、次々に先頭へ躍り出ては、逃げ集団との距離を縮めていく。そして18周回目に突入した直後、長いエスケープは終わりを迎えた。
吸収直後から、青いガーミン・シャープのジャージが、俄然存在感を発揮し始めた。チームタイムトライアル要員として欠かせないジャック・バウワーとアレックス・ラスムッセンの2人が、パワフルな牽引力を思う存分に発揮した。一方で昨大会の表彰台3人を擁するクリテリウムスペシャルチームは、ディフェンディングチャンピオンのヤロスワフ・マリチが、積極的に日本の別府史之を連れて先頭に付けた。「残り一周」を意味する鐘の音が、宇都宮の大通りに鳴り響き、クライマックスの到来を賑やかに告げた。
ゴール前600mの、クリテリウム最後のUターンを回った直後に、あらゆる俊足自慢が熾烈なスプリントへとその身を投げ出した。2010年トラック世界選手権でスクラッチ銅メダルの盛一大も、加速を切った。別府史之も軽い上りの、しかも向かい風の中、前方へと躍り出た。
しかしフィニッシュラインのギリギリ150m手前まで粘ったガーミンのヴァンホフが、あらゆる敵をなぎ倒して、両手をまっすぐ天につき上げた。長年「カヴ」のリードアウト役を務めてきたベルンハルト・アイゼルと、今年からやはりカヴ用最終発射台の1つ手前を任されているマッテーオ・トレンティンとを両脇に従えて、2度目の宇都宮キングになった。
「また日本で走ることができて、この場に帰って来ることができて、本当に嬉しい。チームが素晴らしい仕事をしてくれた」
チーム内でたった1人だけかぶったエアロヘルメットが、25歳オージーの意気込みを、雄弁に物語っていた。
別府史之は日本人として最高位の5位に、さらにトップ10圏内には8位盛、10位大久保陣が喰い込んだ。2年連続ツール・ド・フランス「マイヨ・ヴェール」の本領発揮が期待されたペテル・サガンは、前週に抜歯したせいで抗生物質服用中であり、「本来走るべきではなかった」状態ながら9位で戦いを終えた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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