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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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ゴール前5.5km、90度カーブで風向きが変わったのが合図だった。ジャイアント・シマノが加速を切り、キャノンデールが主導権を競り合った。橋や中央分離帯が待ち構えた危険な市街地コースで、2本の列車が走らせた。右端にはマルセル・キッテル擁するオランダチームが、左端にはエリア・ヴィヴィアーニ率いるイタリアチームが。スカイやFDJも負けじと上がってきた。ところが「ラスト1.3kmで、トム・フェーレルスの背中を見失ってしまった」キッテルの赤ジャージは、徐々に後退して行った。一方で緑のジャージは、ラスト900mの直角カーブへと3人先頭で飛び込んだ。ゴール前300mの「シケイン」へは、ベン・スウィフトを連れたエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが真っ先に突っ込んだ――。
最終ストレートでは、ヴィヴィアーニとスウィフトの一騎打ちが、華々しく行われた。大会の祖国イタリアの若手と、北アイルランド=イギリス開幕を祝いたい英国の俊足が、勝利へ向かって邁進した。スウィフトが優勢か、と思われた。……その時だ。
後方から、赤い影が、とてつもない勢いで前方へと迫ってきた。驚異的なスピードで2人を追い抜くと、フィニッシュラインでハンドルを投げた。マルセル・キッテルが、区間2連勝を手に入れた。やり方こそ違ったものの、前日と同じ結果を、引っ張り寄せた。
「絶対に諦めちゃだめだ、と考えた。幸いにも、ブアニの背後に滑り込むことが出来た。ゴール前300mに近づいても、まだ、好ポジションにたどり着けなかった。でも、できる限りの力を振り絞って、スプリントに打って出た。あれはもはやスプリントじゃなくて、アタックに近かったね。ものすごくエネルギーを使った。だから、ゴール後、地面に倒れこんでしまったのさ」(キッテル)
この日の朝、目が覚めたときに、「もしも今日勝てたら……素敵な誕生日になるのに」と考えたというキッテルは、力づくで最高に素敵な26歳のバースデーを演出したわけだ!それにしても、初日にタフトがマリア・ローザ、3日目にはキッテルが区間勝利と、表彰台のスプマンテで誕生日を祝う選手が続いている。ちなみに、ここからジロの最終日まで、誕生日を控えているのは9選手。ただしホアキン・ロドリゲスは休養日(12日)に35歳になるから、実質、誕生日優勝のチャンスがあるのはフーガーランド(13日)、スタムスナイデル(15日)、ボアッソンハーゲン(17日)、コロブレッリ(17日)、ファンバーレ(21日)、ペトロフ(25日)、フェーディ(29日)、ヴュイエルモーズ(6月1日)の面々である。
落車で体力を消耗したマシューズは、「無理にスプリントに絡まず、ジャージを守ることだけを考え」て、16位ゴールでマリア・ローザを守り切った。その後ろでは、ほんの小さな分断が発生し、キッテルと同タイムゴールが認められたのは上位33選手だけだった。総合表彰台を狙えそうな選手の中で、分断を逃れたのはスカルポーニとラファル・マイカの2人だけ。両選手は、つまり、ライバルたちから11秒を奪い取ったことになる。
一行はアイルランド島へ別れを告げて、南イタリアへ。初夏の太陽と青い海、そして1度目の休養日が、選手たちを待っている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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