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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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通り雨で濡れたダウンヒルを利用して、ジャンルーカ・ブランビッラが飛び出しを図った。さらにはユーロップカーが2度に渡って攻撃を仕掛けた。しかしカチューシャは5人がかりで前を引き倒し、あらゆる反乱を喰い止めた。ラスト1kmのアーチの下で、ニコラス・ロッシュが飛び出しを試みると、またしてもロシアチームが先を阻んだ。むしろ、ここぞとばかりに、ダニエル・モレーノとロドリゲスがカウンターアタックを打った。
「もしかしたら、アタックするタイミングが、早すぎたのかもしれないな。でも、ひどい向かい風だったから、原因を探るのは難しいけど」(ロドリゲス)
おそらく、真相は、単純なこと。「この先もっと、ボクに向いた急勾配があるさ」と本人も言っているように、平均勾配6.2%、最大8%の山道は、プロトン一の激坂ハンターには緩すぎたのだ。なにしろ「上れるスプリンター」のマリア・ローザ自らが、プリトの作り出した穴を埋めに行けたほど。いや、アルデンヌクラシックの前哨戦ブラバンツ・ベイルで、フィリップ・ジルベールに次ぐ2位に入ったマシューズのことは、もしかしたら「パンチャー」と呼ぶべきなのかもしれないけれど。
「上りは問題なくついていけた。でも、ゴール前500mで、分断が出来てしまった。穴を作る原因となったのは、多分、キンタナだったと思うんだ。ボクはそのすぐ背後にいたから、自分自身でギャップを縮めに行かなきゃならなかった。とにかく、そこで力を使い果たしてしまった。もはやスプリントする力が残っていなかった。本当は、スプリントしたかったのに」(マシューズ)
この日のフィニッシュ地形に最も適した脚質を持っていたのは、ディエゴ・ウリッシだった。ゴール前17kmで発生した集団落車で分断にはまっても、ゴール前500mで前方に穴が空いても、チャンスは逃さなかった。マシューズの車輪に張りついて、それからスプリントを勝ち取った。
「ジロのロードブックを見たときに、このステージに印をつけた。こういったタイプのフィニッシュは大好き。今日の優勝予想では、ボクの名前も上がっていたしね」(ウリッシ)
幸いにも今回は、堂々と両手を天につき上げることができた。ジュニア世界選手権で2連覇し、20歳でプロ入りを果たした早熟なウリッシは、2011年、21歳でジロ区間初勝利を手にしている。しかし前回の勝ち星は、フィニッシュライン上で手に入れたわけではなかった。3年前、ゴールに一番に駆け込んだのはジョヴァンニ・ヴィスコンティであり、ヴィスコンティに違反行為があったため、怒鳴りあいと話し合いの末にウリッシに区間優勝の権利が転がりこんできたわけで……。
「昨日の夜、ベッドに入る前に、頭の中で勝ちを予行練習したよ。ヴィッジャーノはどんなふうに上ろうか、とか、優勝した後の表彰式はどうしようか、とかね。こうすることで、勝利を強く信じることができた。ボクにとっては、ものすごく有用なことだったんだ」(ウリッシ)
その背後では、総合争いの強豪たちが、揃って1秒遅れでステージを終えた。ただしカデル・エヴァンスが区間2位で6秒のボーナスタイムを獲得し、総合3位にジャンプアップ。マリア・ローザまでわずか15秒に接近した。総合順位全体が大きくシャッフルされ、多くの総合優勝候補が上位20位以内に居場所を上げた。残念ながらロドリゲスだけは、いまだ、1分47秒差の総合40位に沈んでいる。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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