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BMCのアシストは、山道で猛烈な牽引を行った。後方のライバルから、できる限りタイム差を奪い取るために。しかもマシューズを振り落とせば、エヴァンスがマリア・ローザを着るチャンスがやって来る。オリカボーイズだって、負けじと先頭を引っ張った。後方からは、落車から立ち直った一団が、必死で追いかけてきた。しかし、どうにも統率が取れぬまま。タイム差はまるで縮まらなかった。
6時間37分01秒の長き戦いの果てに。それぞれに2人のアシストを使い切ったマシューズとエヴァンスは、ウェレンスとラボッティーニも含めた4人で、山頂スプリントを繰り広げた。スプリントなら……マシューズのお手のものだった。
「マリア・ローザを守るために、できる限りフレッシュな状態で山道に入ること。それが今日のボクの課題だった。チームメートたちが1日中働いてくれたおかげで、ボクは何もせずに、ただ山道に向けて集中するだけでよかった。そして、最高の状態で、山道へと飛び込むことが出来た。脚の状態は良かった」(マシューズ)
ピンク色に着替えてから4日目。ついにマシューズがジャージにふさわしい勝利を手に入れた。2013年ブエルタの区間2勝に次ぐ、グランツール「個人」3勝目を、2級峠の山頂でもぎ取った。おかげでピンク(総合)と白(新人)に加えて、青(山岳)ジャージもコレクションに加えてしまった。
「マリア・ローザ姿で、カデル・エヴァンス相手に山頂フィニッシュを制するなんて、これ以上の成功はないほどだよ。これまでも上りでは悪くなかったけど、いまひとつ自信がなかった。でも、この2ステージで、自分自身に証明できたよ。ボクにはできるんだ、って。難関山岳ステージはさすがに無理だけど、この先は、短い上りフィニッシュは狙っていきたい。だって、ボクはこういう地形でも勝てるし、平坦スプリントでも勝てるってことが、分かったんだから」(マシューズ)
エヴァンスは区間3位でゴールし、ボーナスタイムを4秒手に入れた。幸運な37歳から、49秒遅れで、不運なライバルたちはフィニッシュラインへたどり着いた。さらにスカルポーニは1分37秒、痛みを押して最後まで走り続けたロドリゲスは7分43秒、ロッシュに至っては15分08秒もタイムを失った。
総合地図は大きく塗り替えられた。首位マシューズと2位エヴァンスの差は15秒→21秒に開いたのだが、むしろ「それ以下」の選手との差が、19秒→1分18秒と拡大した。エヴァンスの1分以内につけるのは、もはや総合3位のウランのみ(57秒差)。総合4位のラファル・マイカ以下、多くの選手が6日目にして早くも大きなハンデを背負うことになった。ロッシュは今後、マイカのアシスト役にまわることになりそうだ。満身創痍のロドリゲスは、志半ばで、大会から立ち去った。
「ジロを立ち去るのは辛い。でも、これ以外の選択肢は、もうないんだ」(ロドリゲス、チームプレースリリースより)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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