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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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ゴール前7kmから、確かに、約3kmに渡って勾配10%超のゾーンが存在した。前方の2人こそ、この場所で差は付けられなかったけれど、3分半以上後方を走るメイン集団内では、3つの試みが相次いだ。アレクサンドル・ジェニエが加速し、アレクシス・ヴュイエルモーズがアタックし、そしてドメニコ・ポッツォヴィーボが飛び出した!
「まだ集団の人数はかなり多かったから、ヴュイエルモーズに、アタックしてみるように頼んだんだ。集団がどう動くか、見たかった。それから、ボクは自分のチャンスを試しに行った」(ポッツォヴィーボ)
前ステージ後、フランスの複数メディアから「散々チームメートに働かせておきながら、肝心のリーダーは動かなかった」と手厳しく批判されたが、この日は立派に責任を果たしに行った。前日も懸命に働いてくれたヴュイエルモーズ(ちなみにパリ〜ニースでは、カルロス・ベタンクール総合優勝のために連日とんでもなく働いた)に一瞥を送ると、ひとり軽々と山を上り始めた。朝から14人の逃げに乗っていたジュリアン・ベラールからは、追い抜く際に、「加速台」として最後の力をもらった。
小型ヒルクライマーにとっては残念だったことに、そして、もちろん前を行く2人にとっては極めて幸いだったことに、前日とは違う結末が待っていた。ポッツォヴィーボが劇的に先頭を捕らえることはなかった。標高1538mの山頂では、むしろ室内トラックのスプリント種目のように、ウェーニングとマラカルネによる壮大な駆け引きが繰り広げられた。
「ウェーニングはスプリントに強いと思ったから、いっぱい食らわしてやろうとトライした。なんとか、自分に有利になるよう、あれこれ努力した」(マラカルネ)
「ベストポジションは、前方の選手の背後から、飛び出すこと。ちょっとギャンブルのようだったね。マラカルネはかなり早めに仕掛けた。上り基調で、向かい風も吹いていた。追い抜くためにエンジン全開でまわしたさ」(ウェーニング)
2005年ツールで区間1勝を、2011年ジロでは区間1勝に加えてリーダージャージ5日間という経験を持つ33歳ベテランに、どうやら一日の長があった。初日チームタイムトライアルを勝ち取り、前夜までマリア・ローザを守る喜びを噛みしめ、そしてこの日は、大会一発目のエスケープ挑戦できっちりと勝利をつかみとった。「ビンゴ!」
2人から42秒遅れて、ポッツォヴィーボが区間3位に滑り込んだ。すなわちマリア・ローザ集団より26秒早いゴールだった。ボーナスタイム4秒も合わせると、総合ライバルから軒並み30秒を奪い取ったことになる。総合でも10位(1分50秒遅れ)→4位(1分20秒遅れ)と大きくジャンプアップ。総合3位ラファル・マイカまでは10秒差、総合2位リゴベルト・ウランまでは23秒差に近づいた。大会当初の目標は「総合5位入り」だったから、「レース第1週目の出来としては上々!」と本人も満足の様子だ。
チーム総出で1日中レースをコントロールし続けたカデル・エヴァンスは、マリア・ローザを難なく守りきった。過去2回は「一日天下」だったが、3回目は長期政権へと持ち込みたい。とりあえず、大会2度目の休養日を挟んで、第10ステージも再びピンク色で走る。またポッツォヴィーボが4位に飛び込んだため、前日までの4位から9位は、スライド式で1つずつ順位を交替させた。タイム差には変更はなかった。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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