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サイクル ロードレース コラム 2014年5月31日

ジロ・デ・イタリア2014 第19ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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アルベルト・コンタドールに憧れているという1990年生まれ23歳のアールは、スペイン人チャンピオンに似た軽いダンシングスタイル&高速ケイデンスで、絶えず加速を続けた。しかも、このモンテグラッパの山道は、下見などしなくても、隅々まで知り尽くしていた。アンダー時代から、幾度もこの山で勝負してきた。2010年のジロ・ベビーでは区間8位に入っている(勝者はカルロス・ベタンクール!)。さらにはジーノ・バルタリも勝ち取った伝統のワンデーレース、バッサーノ〜モンテ・グラッパで数回トップ5入りし、2011年には優勝をさらい取った。

「ここでユース時代に勝ったことがあるから、この山で好結果を出せて本当に嬉しい。1時間に渡って、ひたすら猛烈に走った。自分の能力を最大限に搾り出した」(アール)

疲れを悟られぬよう、なんとかごまかしながら走ったと言うけれど……、山頂では1時間05分54秒というぶっちぎりの暫定トップタイム。そこまでの首位タイム(ポッツォヴィーボ)を2分07秒も上回る、驚異的な記録だった。ただし、2つ目の区間優勝のチャンスは、同じ1990年生まれの、ほんの5ヶ月だけ先に生まれたキンタナに、あっさりと踏み潰されてしまうことになる。

最終走者の特権は、先行走者のタイム情報を常時チェックしながら走れること。ラスト3kmほどまでは、GPS衛星測位システム情報によれば、キンタナvsアールの区間の戦いはほぼ引き分けだった。ところが、マリア・ローザは、そこからが強かった。ダンシングスタイルでフィニッシュラインギリギリまで力を振り絞り、アールを17秒上回る1時間05分37秒で戦いを終えた。勾配の最も厳しい最終7.5kmを、アールが23分13秒で走ったのに対して、キンタナは23分04秒で駆け抜けた。ウランは23分54秒だった。

「本当に嬉しい。すごく見ごたえのある1日だったし、コースを走っている間中、本当に気分が良かった。なによりも、ファンたちがボクを応援してくれたのが、本当に嬉しかった。この区間で勝てたことは、ものすごく重要なこと。ステージ前には公言しなかったけれど、山岳TTはボクの得意分野だから、絶対に勝たなきゃならなかった」(キンタナ)

第16ステージの区間勝利は、残念ながら疑惑と議論にまみれてしまったけれど、今回は公明正大に手に入れた勝利だった。同時に、1分26秒遅れで区間3位に入ったウランとの総合タイム差を、3分07秒差にまで大きく開いた。魔の山ゾンコランを前に総合優勝にも王手をかけた。

ウランが心配すべきは、むしろ総合2位の座。アールが3分48秒差の総合3位に昇格し、つまりウランとの差は41秒に縮まった。しかもウランが「アールがアタックしてくるだろう。総合2位を守るために走る」と語る一方で、アスタナ勢は「2位にアタックし、総合リーダーにもアタックだ。果敢にトライして、ジロを勝ち取らなきゃ」と力強い発言をしている。またローランが1分57秒遅れで区間4位。タイムトライアルが極端に苦手なフレンチヒルクライマーは、人生最高のTTを実現させたが、表彰台からはわずか1日で陥落してしまった。表彰台復帰へは、1分38秒のギャップを埋めなくてはならない。好走ポッツォヴィーボは総合6位→5位へと1つアップ。やはり1990年生まれのマイカは、前日から胃痛に苦しめられているせいか、6位へと順位を落とした。

ところで、ウランが「2位保守」発言をしたのは、「ゾンコランはそれほどタイム差がつく山ではないから」とのことらしい。ちなみに2003年大会でのゾンコラン区間は、勝者ジルベルト・シモーニと2位のタイム差は34秒。2007年は位・2位が同時ゴールで3位は7秒遅れ。最もタイム差がついたのが2010年大会で、1分19秒差。イヴァン・バッソ率いるリクイガス(当時)が、ステージ中盤から恐ろしいほどの隊列を組んで、2位カデル・エヴァンス以下を粉々に蹴散らしたのだった。そして2011年大会は、現在はキンタナの山岳アシストを務めるイゴール・アントンが、33秒差で「地獄の門」を制している。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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