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自転車競技というのは、一部の選手にとっては、むしろ厳しすぎるものだった。スタフ・クレメントは40km地点で落車し、即時リタイアを余儀なくされた。ゴール前16kmの上り途中では、ビーエムシーレーシングチームの総合リーダー、ティージェイ・ヴァンガーデレンが地面に転がり落ちた。途端に「チーム内はパニックに陥った」(ヴァンアーヴェルマート)。山岳アシスト役のダルウィン・アタプマが一緒に落車し、左大腿骨を骨折し即時リタイアに追い込まれたものだから、不安はいっそう増したに違いない。アシストたちが必死に牽引したが、総合有力選手がほぼ全員滑り込んだ先頭集団から、1分03秒の遅れを喫した。
ゴール前900mの90度カーブは、道幅が極めて狭く、集団落車発生はある意味「必然」だった。ゴール前200mでは、アンドリュー・タランスキーが激しくアスファルトに叩きつけられた。スプリントの最中だったけれど、不幸中の幸いで、他人を巻き込まぬ単独での落車だった。総合上位入りを目論むアメリカ人にとっては、「救済ルール」のおかげでタイム差ゼロなのも幸いだった。ただし、ゴール地のTVモニターでスローVTRを見つめながら、開催委員長クリスティアン・プリュドムが「タランスキーは頭がイカレテルのか!?」と怒りの雄叫びを上げたことを、ここに付け加えておこう。落車直前にあたりをキョロキョロみまわしたり、何度も後ろを振り向いたりした行動は、たしかに大いに非難された。
それ以外のマイヨ・ジョーヌ候補たちは、「簡単だったけど、少々厳しくもあった」(アルベルト・コンタドール、ゴール後TVインタビューより)ステージで、誰ひとりとして無駄にタイムを失うことはなかった。ヴィンチェンツォ・ニーバリは6枚目のマイヨ・ジョーヌに難なく袖を通した。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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