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そしてスペイン人は、ラスト1kmで軽やかに、しかし全力で飛び出した。シチリアっ子はすかさず張り付いた。ほんのわずかな動きさえも見逃すまいと、3つの峠の間中、マイヨ・ジョーヌはひたすらコンタドールの背中を見つめ続けていた。もちろん2人で飛び出してからも、とにかくライバルだけを凝視し、全ての行動を共にした。コンタドールが脚を緩めればニーバリも緩め、加速すれば後に続き、後ろを振り向けばやはり後ろをチラリと見て——。コンタドールが黄色い影をようやく振り払えたのは、ゴール前200mだった。
「調子は良かった。でも、付けられたタイム差は、ほんの少しだけ。ただニーバリを突き放せるとは、思ってもいなかった。とにかく、本当に、短い上りだったからね。この結果には満足しているよ」(コンタドール、個人プレスリリースより)
「コンタドール向きの、爆発的で厳しいステージだったよね、でもボク自身は調子がすごく良かったから、彼の後輪に張りついて、状況コントロールができた。ゴールの手前でギアチェンジをミスして、そのせいで足が少し止まってしまった。数秒も失った」(ニーバリ、公式記者会見より)
コンタドールがニーバリから取り戻したタイムは、結局のところ、わずか3秒だった。総合2分37秒差が、2分34秒差に縮まっただけ。マイヨ・ジョーヌ本人は「どうせ自分向きの山じゃなかったから」と、たいして気にも留めていない。ちなみにニーバリはもちろん総合首位のままで、コンタドールは16位から6位へと大幅なジャンプアップを成功させた。
またコンタドールのアタック時に少々出遅れたリッチー・ポートは、すぐに立て直して、コンタドールから7秒差・ニーバリから4秒差でフィニッシュ。総合でも7位から1分58秒差の3位に上がった。オーストラリア人の4秒後には、フランス人のティボー・ピノとジャンクリストフ・ペローが入り、すでに区間優勝で歓喜に沸くフランスのファンたちをさらに喜ばせた。ニーバリとコンタドールが揃って「危険人物」として名前を上げたバルベルデは、スペインの同朋から19秒遅れで1日を終えた。総合では9位から、2分27秒差の5位へ浮上だ。
初の山岳ステージで総合順位は大きくシャッフルされた。3位だったペーター・サガンは一気に38位まで急降下。ちなみに2位はフグルサングで、4位はクヴィアトコウスキーで変わらず。ただしタイムを参照すると、それぞれ前日より1分42秒、1分36秒もタイムを失っている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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