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サイクル ロードレース コラム 2014年7月16日

「フルーム最強を科学する」VOL.3 オールラウンダーの筋肉とは!?

ツール・ド・フランス by 櫻井 智野風
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注目したいフルームの特異性

ただ、ここで注目なのはフルームの特異性です。他のツール・ド・フランス歴代優勝者のデータを見ると、「20分間ペダリングにおける出力」が高い選手は、「60分間ペダリングの出力」や「最大酸素摂取量」の値も高くなる傾向にあります。また、「無酸素パワー」が高値を示す選手は、それ以外のデータはそれほど高くない傾向を示しています。つまり、フルームの20分間ペダリングにおける能力の高さは、他の選手とは違う仕組みによるものと言えるかもしれません。

リカバリー能力の高さがフルームの武器

この「20分間ペダリングの出力」のデータは、筋肉における乳酸の再利用能力を測る指標とも言われています。自転車競技は、常に脚を動かすと同時に、地面からの衝撃を繰り返し受けるランニングのような運動形態ではありません。ペダリング中も多少の休息を取れることや、筋肉へのダメージが少ないことが特徴と言われています。そのため脚部の血液の流れも比較的スムーズであると言われ、筋肉のハイパワーな出力の際、速筋や中間筋線維で生成された乳酸をスムーズに遅筋線維に運ぶことが容易になります。筋肉自体が、乳酸の再利用能力が高いシステムを持っていれば、エネルギーの枯渇による急激な出力低下を招くことなく運動が続けられます。もしフルームの筋肉の持久的能力に弱点があったとしても、ハイパワーな出力をスムーズなリカバリー能力により繰り返すことが出来れば、これは逆に彼の武器となっているのかもしれません。

自転車ロード競技に最適の筋線維タイプとは

これらのデータより推測すると、フルームの筋線維タイプは、速筋線維と中間筋線維が主となった構成になっていることが考えられます。しかし彼の場合、ハイパワー出力時に速筋および中間筋線維で生成された乳酸を、遅筋線維で再利用する能力が並はずれて優れているのではないでしょうか。つまり、高速でペダルを漕ぐことが重要ですが、それほど筋肉へのダメージが大きくなく、運動中にも多少の休息を作ることが出来るこの競技において、(予測ではありますが)フルームの筋線維タイプ構成がベターと言えるのかもしれません。

今年のチャンピオンに輝くのは、どんな選手なのか。いや、どんな筋線維タイプの選手なのか。そういった様々な面からも、今後のツール・ド・フランスから目が離せません。

またフルームは、ブエルタ・ア・エスパーニャ出場に意欲を見せているようです。そこできっと最強フルームを見せてくれることでしょう!今から楽しみですね。

代替画像

櫻井 智野風

1966年生。神奈川県出身。博士(運動生理学)。現在は桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部教授として指導と研究に取り組んでいる。スポーツ科学、スポーツ生理学を専門分野とし、主な著書に「不調の原因を解消する本」(2014/出版)、「ランニングのかがく」(2011/秀和システム)などがある。その他に日本陸上競技連盟の普及育成委員を務め、東京オリンピックに向けたジュニア世代の育成強化に力を注いでいる。自らも選手として活躍していた十種競技を中心に世界選手権や五輪などに出場する日本代表選手などを強化に関わっている。

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