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サイクル ロードレース コラム 2014年7月21日

ツール・ド・フランス2014 第15ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ゴールまで40km。今度は突然、空から大粒の雨が叩きつけるように落ちてきた。1週間前に通過したばかりのヴォージュ山塊には、雹被害が発生していたから、雨だけというのはむしろ幸いだったのかもしれない。ただ路面は極めて滑りやすくなった。自らの落車を避け、さらには「もらい」落車を避けるため、総合有力者たちはプロトン前方に集結した。エスケープ追走はしばらく二の次で、慎重に、慎重にペダルを漕いだ。

ゴール前20km、雨がようやく上がった。スプリンターチームに再び制御権が手渡された。タイム差はいまだ1分25秒残っていた。

ここから、追走に、アタックに、カウンターアタックに、とてつもなく大忙しのラストがやって来る。風作戦は失敗に終わったオメガファルマ・クイックステップから、ミカル・クヴィアトコウスキーが単独アタックをしかけた(残り16.5kmで吸収)。ラスト5kmからはチームメートのトニー・マルティンが、自慢の独走力で特攻を繰り返した。またドイツナショナルチャンピオンジャージのアンドレ・グライペルを背負うロット・ベリソルの赤いジャージが、2人→3人→5人と前方に繁殖して行く一方で、ルーカ・パオリーニとアレクサンドル・クリストフ、たった2枚ながらカチューシャ紅白ジャージも存在感を放った。

肝心のエルミガーとバウアーは、ギリギリの綱渡りを続けていた。ラスト10kmで48秒。5kmで34秒。3kmで32秒。ここまで協力体制は決して崩れなかった。

「ゴール前6kmで、もうダメだ、って悟った。ところがゴール前3kmで、32秒差だと聞かされて、『逃げ切れるぞ』と考えた。おそらく、ジャック(バウアー)も、同じことを考えたに違いない。彼は全力疾走を止めて、『ポーカーゲーム』を始めてしまった。逃げ切りゴールに、よくあるパターンだよね。……もしもフィニッシュラインまで全力疾走していたら、上手く行っていたさ。おそらくね」(エルミガー、ミックスゾーンインタビューより)

キャノンデールも、ティンコフ・サクソも、ジャイアント・シマノも、こぞって追走に打ち込んだ。ユーロップカーも競り上がってきた。フラムルージュは、2km地点から逃げている2人が、ぎりぎり13秒リードで通過した。ラスト500mでも、いまだ、2人の姿は前方にしっかり確認できた。そしてライン直前350m。吸収が完了してもいないのに、メイン集団はスプリント体制に入り――。

「ツールはつくづく残酷だ。逃げ切れる、って最後まで信じていた。ラスト400mまでエルミガーの後輪に張り付いて、それから先はフィニッシュラインまで全力疾走した」(バウアー、ゴール後TVインタビューより)

がっくりと肩を落とし、たった今起こったことを上手く消化しきれないバウアーの横で、クリストフが片手を突き上げた。ラインまであと50mで、南半球ニュージーランドのルーラーは集団に飲み込まれた。代わりに北国ノルウェーの俊足が、第12ステージに続く人生2度目のツール区間勝利をさらい取った。雨が上がった後には、いかにも南仏らしい、強烈な日差しがニーム闘牛場を照らしていた。

「普段なら、こういったピュアスプリントは、グライペルとかキッテルに勝てないんだ。でも、グランツールでは、エネルギーが残っているかどうか、それが結果を大きく左右する。彼らよりもボクは、ずっと上手に山を越えられたから」(クリストフ、公式記者会見より)

そのグライペルは4位、キッテルは11位に沈んだ。フィニッシュラインギリギリで吸収されたバウアーは10位、エルミガーは16位だった。総合14位までは1秒もタイム変動はなく、当然のように、ヴィンチェンツォ・ニーバリが2度目の休養日もイエロージャージで過ごすことになった。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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