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「ヴォクレールから『ボクは引けないよ、後方のチームメートを待っているから』って言われたんだ。だから言ってやった。『200km前にも同じ話を聞かされたよ!』って。21人の集団だったときは、ヴォクレールは集団を上手く制御できていた。だけど最終的に5人中の2人になってからは、コントロールがより難しくなったようだった」(ロジャース、公式記者会見より)
21人から抜け出したヴォクレール、ロジャース、ゴチエ、ホセ・セルパ、ヴァシル・キリエンカの5人が、21.5kmの長い下り坂で猛烈なダウンヒルを繰り広げた。ゴール前5kmにゴチエがもう一度だけアタックを試みた。すぐさまロジャースが追いかけると、ゴール4.5km、あっさりと追い抜いていった。
「ロジャースがアタックしたとき、ボクにはどうしようもなかった。だって、ロジャースの後輪についていたのはチームメートで、ボクじゃなかったから。前にチームメートがいるのに、ボクが後を追いかけるわけにはいかないからね。数的優位は、時に、不利となるものさ」(ヴォクレール、ゴール後インタビューより)
世界選手権タイムトライアル3回優勝のルーラーを、もはや止められる者など存在しなかった。昨秋のジャパンカップ優勝直後のドーピング検査でクロンブテロールが検出され、「たくさんの時間と多額のポケットマネーを費やして」(ジロ公式記者会見より)、潔白を勝ち取った。4月末に自転車レースに復帰を果たしてからは、「ここで自分のベストを尽くしたとしても、起こりえる最悪の事態とは、自転車レースに負けることだけ」と腹をくくれるようになった。
「新しく気持を切り替えたことで、様々なチャンスへの扉が開かれた。昔は、起こったことを、ありのままに受け入れていたものだよ。でも、あんなことが起こった後、人生に対する考え方はガラリと変わった。『もう、他の誰かの人生を生きるのは、止めよう』って思った。本当に目指すべき目標を見定めるのは、時に、ひどく難しいものだね。かつてのボクは、グランツール総合優勝にトライしてきた。でも今のボクは、1週間程度のステージレースなら勝てる、って理解するようになった。エスケープに乗るためには、あえて総合争いから脱落しなきゃならないこともね。アルベルト(コンタドール)がいたら、間違いなく、同じようなチャンスは巡ってこなかった。でも、今のボクはこうして、勝つチャンスを手に入れた」(ロジャース、公式記者会見より)
出場「自粛」明け直後のジロ・デ・イタリアでは、やはりエスケープで区間2勝を手に入れた。そしてこの日、ツール・ド・フランスでも、美しき逃げ切り勝利を味わった。2003年に初めてフランス一周に足を踏み入れてから12年、出場10回目。生まれて初めての区間勝利だった!
はるか、はるか後方のメイン集団も、やはり、バレス峠の上りから真剣勝負に突入した。突如としてモヴィスターが隊列を組み上げた。休養日に「ニーバリに攻撃を仕掛けていく」と断言した総合2位アレハンドロ・バルベルデのために、まるでスプリント列車と見間違うような、とてつもないハイスピードで牽引を行った。当然あっという間にメイン集団は小さくなった。あまりの威力に、すでに13日間マイヨ・ジョーヌ保守を続けてきたアスタナのアシストたちは、次々と脱落して行った。総合10位ピエール・ローランと14位フランク・シュレクも耐え切れなくなり、続いて総合5位ティージェイ・ヴァンガーデレンも置き去りにされた。総合7位バウク・モレマも落ち、白ジャージ姿の総合3位ロメン・バルデが少しずつ遅れがちになってきて……。
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