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ゴール前14.5km、ステージ唯一の山岳、4級モンバジヤックの麓で、リードは20秒。この1.3kmの短い上りを、オランダ人は全力で駆け上がった。
「朝のミーティングで、チームから絶対に1人は逃げに入るよう指示された。ぼくが上手く滑り込んだ。1人でさらに前へと飛び出した。だって脚の調子が良かったから。全力で走ったよ。だけど坂道で、プロトンから誰かがアタックして、ボクを追いかけてくるのが見えた」(スラフテル、ミックスゾーンインタビューより)
その人は、青い、ガーミン・シャープのジャージを着ていた。
「チームメートの、ラムナス・ナヴァルダスカスだって気がついた。だから彼に声をかけた。『もしも1人で行けるなら、先に行け!』って。だってぼくらのチームには、どうしても区間勝利が必要だったから」(スラフテル、ミックスゾーンインタビューより)
しっかりとリレーのバトンは引き継がれた。ナヴァルダスカスは、1人で、先へ行った。……ただ面白いことに、スラフテルとナヴァルダスカスの言い分は、少々違うのだ。
「朝のミーティングで、戦術が伝えられた。、ぼくとスラフテルは最後の峠まで集団内で待って、そこからアタックしてレースをかき回すよう指示された。でも、彼は、エスケープに乗っちゃったんだ。ぼくがアタックを打って、追いついた後、スラフテルは強烈に牽引してくれた。そしてぼくを先へと送り出してくれた」(ナヴァルダスカス、公式記者会見より)
タイムトライアル巧者の攻撃に、慌てたのがスプリンターチームだ。たとえばナヴァルダスカスが麓から猛加速したせいで、集団スピードが急速に上がり、スプリント3勝マルセル・キッテルはメインプロトンから脱落した。たとえば「すべてがぼく向けのステージだったのに、1つも勝てなかった」(第12ステージ後インタビュー)と愚痴っていたペーター・サガンは、この日もここまで散々チームを働かせたが、さらに激しく働かざるをえなくなった。
「ほんのコンマ数秒でもタイムを稼ぐために、あらゆる細部に集中した。カーブの軌道をどう取るか。観客の立ち居地からくる、風の影響はどうか。そんなことをね。ジャック・バウアーと同じような終わりを、迎えたくなかったから」(ナヴァルダスカス、公式記者会見より)
たしかに5日前、同じような豪雨の中で、チームメートのジャック・バウアーはゴールライン25m手前で吸収されていた……。
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