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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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オメガファルマには、もう1つ、大きな不運が襲い掛かる。そもそもブランビッラとポエルスは、チームリーダーの総合6位リゴベルト・ウランの「もしも」のために、前方に送り込まれたはずだ。しかし、この2日間で総合順位を1つずつ落としてきたウラン自身が、3日目で大きく崩れた。
第一の山では、ティンコフ・サクソが高速リズムを刻んだ。総合4位ホアキン・ロドリゲスは、予想外の猛スピードに隙を付かれ、大きく突き放された。集団復帰のために、必死の追走を15kmも続ける羽目になった。だからこそ合流後は、カチューシャが制御権を握り締めた。それこそ全員体勢で前を引いた。すると、今度は、ウランが脱落する番だった。プリトのように、決して、単なる不注意で遅れたわけではない。
「5、6日前から、気管支炎に苦しめられていたんだ。昨日もすごく苦しかった。でも今日は最悪だった。息がまったく出来ないような、そんな感覚だった。最初の山を登っている時からすでに、もう、レースを止めてしまおうか、と考えたほどだったよ」(ウラン、チーム公式リリースより)
苦しくても、タイムをどんどん失っても、リタイアしなかったのはチームメートが支えてくれたからだと言う。最終的には今ステージだけで15分以上もタイムを失い、総合トップ10圏外へと大きくはじき飛ばされてしまった(総合16位、18分53秒遅れ)。それでも、ウランは、あくまで走り続けるつもりだ。そのために新たに設定した目標は、最終第21ステージのタイムトライアルで好結果を出すこと。もちろん、まずは体調を立て直すことが先決である。
ファビアン・カンチェラーラがメイン集団から飛び出し、30kmに渡って独走を続けたこともあった。レース半ばでカチューシャが少しだけ減速したことに対して、「だって僕は同じペースで走り続けたかったから」(チーム公式HPより)というのが理由だった。とりあえず世界選手権の個人タイムトライアルへ向けた調整ではない。そもそも、ポンフェラーダでは、TTには出場せず、3週間後のロードレース一本に集中する予定である。
総合争い以外にも、様々なドラマが繰り広げられたステージを、173人が走りきった。猫の額ほどの小さな山頂で、ほんの一息ついた後、各々が休養の地へと散っていった。チームバスでの旅は、350kmもの大移動。夜遅くホテルへと到着したら、残り5日間の激戦に向けて、選手たちは静かに英気を養うのだろう。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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