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「フルームが加速した時、うん、僕は、ちょっとしたスプリントをする羽目になったよ。2人に追いつくために後から壮大な努力をするよりは、(すぐに張り付いたほうが)エネルギーの温存になると思ったんだ。でも、フルームのリズム変化は、ものすごく強烈だった。だから、僕は並走を止めて、自分のペースで走ることに決めた」(バルベルデ、チーム公式HPより)
アルを振り払い、バルベルデを蹴落としたフルーム(とコンタドール)は、ついにロドリゲスにも追いつき、追い越した。山頂フィニッシュまで残り4.2km。2014年ブエルタ2強の、最後の一騎打ちが始まった。
「フルームとの決闘は、いつだって闘志を掻き立てられる。あれだけの勝歴を誇る実力者と、勝利を賭けて争うというのは、興奮させられるものだよ。それに、フルームとの対決は、決して簡単ではない。だって、彼が本気の全力疾走を始めたら、そこからはリズムが落ちることはないからね」(コンタドール、大会公式記者会見より)
7月のツール・ド・フランスで総合優勝を争うために、2人の大チャンピオンは、昨冬から長く厳しいトレーニングを積んできた。しかし、フルームは第5ステージで、コンタドールは第10ステージでそれぞれ落車の犠牲となり、失意のリタイアを余儀なくされた。手首を骨折した英国人は「大それた野望は持っていなかったんだよ。トップ10入り程度を目指すつもりだった」(ゴール後インタビューより)。右脛骨に亀裂が入ったスペイン人は、開幕前に「総合は無理だろう。徐々に調子を上げて、3週目の区間勝利を目指したい」と語っていた。そんな2人が、3週間の終わりに、総合優勝を争っている!
「最後の上りでは死力を尽くした。残念ながら、常に僕が彼を引く形になってしまったけどね。まあ、レースってのは、こういうもんさ。コンタドールを引き剥がそうとあらゆる工夫をしたけれど、僕より、彼のほうが強かったんだ」(フルーム、ゴール後インタビューより)
フルームは夢中で加速を繰り返した。独特のシッティング加速だけでなく、ダンシングでのスピードアップさえ試みた。コンタドールはただピタリと張り付き、決して離れなかった。そして、ラスト700m、エル・ピストレロは最後の仕上げに取り掛かった。散々力を費やしてきたライバルを、一瞬の加速で置き去りにすると、単独で山頂を目指し始めた。
山道に押しかけたファンたちは、熱狂しすぎて、コースに溢れ出した。チームオーナーのオレグ・ティンコフ氏は、「ビューティフルでワンダフル!コンタドールはヒーローだ!」と大声で感動を口にした。監督のビャルヌ・リースは、ただ静かに微笑みながら、スタッフと固い抱擁を交し合った。山頂にマイヨ・ロホ姿で現れたコンタドールは、おなじみバキューンジェスチャーを披露した後に、天に向けて両手を突き上げた。
「僕にとって一番スペシャルな優勝は、やっぱりフエンテ・デ区間で大成功を収めた2012年大会だけど……、このブエルタは、最もハイレベルなライバルたちを退けての優勝だ。明日の、最終ステージは、できることなら、勝利を満喫したい。喜びを噛み締めながら走りたいね」(コンタドール、大会記者会見より)
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