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赤と黒のアメリカ・スイスチームも、黙って指を加えていたわけではない。ゴール前35kmまでくると、スイス・リヒテンシュタイン人のステファン・クンを前方に飛び出させた。この3月にトラック個人追走で世界チャンピオンに輝いた21歳は、ちょうど20日前の、やはり雨の降りしきるツール・ド・ロマンディ第4ステージでは、見事な独走勝利を決めていた。プロ1年目で、いきなり連れて来られた初グランツールの大舞台でも、堂々たるもの。すでに2回もアタックを打っていた。そして、この日が、3回目の挑戦。……残念ながら、それ以上の興奮を産み出すことはできなかった。BMCの追走作業も、最後まで報われることはなかった。
ちなみに、このクンが勝った翌日に、山頂フィニッシュで区間2位に飛び込んだのがザカリンだ。同時にイエロージャージを手に入れると、そのままクリス・フルームを抑えて、ツール・ド・ロマンディの総合優勝さえもぎ取った。とてつもないセンセーションを巻き起こし、すわ、ベルズィンの後継者か(1994年に23歳でジロの総合を制したロシア選手)と関係者を興奮させたものだ。
このジロにも「総合争いを」と大いに期待されて乗り込んできた。ところが初日から調子が上がらず、第4ステージで17分以上ものタイムを失った。しかし、ワールドツアー1年目でグランツール初体験の25歳は、すぐに区間勝利へ頭を切り替えた。イタリアでもビッグな旋風を作り出すために。
3回目のトレモンティと半だった。この回だけは、山頂に山岳ポイント(4級)がかけられていたけれど、すでにステージ後の山岳賞奪還を決めていたインサウスティは、どうやらポイント以外のことに気を取られていた。
「山岳賞を少しずつでもリードしていくことが、僕にとっては大切なことだった。でも、もしも可能なら、区間勝利も狙っていこうと考えていた。これはかなり難しいことなんだけどね。そうして、逃げ集団の選手たちと互いに顔を見合わている隙に、ザカリンに飛び出されてしまった」(インサウスティ、チーム公式HPより)
頂きがほどよく近づいた頃に、ふらふらっと何気なく前に出たザカリンは、突如としてペダルを強く踏み込んだ。そのままトップスピードで下りへと飛び込むと、危険を顧みず前方へと突進していった。
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