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そこから先の40kmは、アルにとっては長く孤独な戦いだった。モルティローロの上りは、まだ6km半も残っていた。一度は追い抜いたヘシェダルやトロフィモフに追い越された。下りではアンドレイ・アマドールと共闘体制を組めたかに思えたが、ラスト18km地点のメカトラで、置き去りにされた。アプリカの2度目の上りに入り、ゴールまで残り11kmの地点で、アスタナのチームカーにさえ見捨てられた。マリア・ビアンカの側を離れ、前にいるランダの元へと、走り去っていった。
「今日だけで20分を失う可能性だってあった。大切なのは、諦めてしまわないことだった。気力でペダルを回した」(アル、ミックスゾーンインタビューより)
さすがにタイム損失は2分17秒だけで済んだ。ただ、もしかしたら、チームリーダーの座は失ったかもしれない。
コンタドールとクルイスウィクと一緒に、ずっと3人で走ってきたランダが、ゴール前3.8kmで勝利のアタックを決めた。Vサインでフィニッシュラインへ飛び込んだ。山頂フィニッシュ2連覇で、総合でも2位に浮上した。総合首位コンタドールからは4分02秒遅れで、3位アルに対しては、50秒のリードを有している。
「この先どうなるのかは、まだ分からない。アルの体調回復具合にもよるけれど、もしかしたら僕ら2人で協力し合って、コンタドールを倒しにも行けるかもしれないよ。僕にとってはとにかく、新しい状況だ。済んでしまったことではなく、これからどんな風に物事が終わっていくのかを、見ていこう」(ランダ、公式記者会見より)
本当ならば「クルイスウィクに勝たせてあげたかったんだけど」と記者会見で述べたコンタドールは、2位の座をオランダの27歳と無理に争うことはせず、ランダから38秒差の3位で山頂にたどり着いた。11回目のマリア・ローザ表彰式では、いつもよりも強く、思いを込めてガッツポーズを握り締めた。自らに惜しみない拍手を送ってくれるティフォジには、おなじみのピストル「バキューン」ポーズの代わりに、ハートを叩き、心を込めた拍手をお返しした。
「チームメートのみんなのことも、誇りに思っている。今日の彼らは100パーセントを尽くしてくれた。見事だった。皆さん忘れがちだけれど、僕らのチームは、毎日スタート直後からずっとレースを制御しているんだよ。僕がこのジャージを着ているのは、彼らがいるおかげなんだ」(コンタドール、公式記者会見)
混乱の1日のきっかけを作ったトロフィモフは、アマドールと一緒に、区間勝者から2分03秒遅れでゴール。最終1kmで2人から後れを取ったヘシェダルは、2分10秒差でフィニッシュラインを越えた。総合ではランダが4位から2位へ格上げされたことにより、アマドールが3位から4位へ自動的に格下げ。トロフィモフは6位から5位へ、ヘシェダルは13位から10位へとそれぞれに順位を上げた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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