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「山が近づく前までは、ずいぶんと静かな1日だったのに。でも、落車が起こって、アルベルトがアタックして……、全てが一変してしまった」(アル、ゴール後TVインタビューより)
ただコンタドールは、決して、全速力で山を駆け上がったわけではない。ゴールまでは46km残っていた。明日も難関山岳ステージが控えている。だから自分のペースで、タイムトライアルのような気分で、黙々と登り続けた。一時はライバルたちに2分近くタイム差を開いたけれど、無理に独走を続ける必要もないとさえ考えた。
「ヘシェダルが後ろから1人で追いかけてきていると、無線で聞かされた。だから彼ならきっと、良い同盟を組めるんじゃないか、って考えたんだ。もちろん、まずはヘシェダルがアルの集団から十分なタイム差をつけることが、前提条件だったわけなんだけど。だから慎重に様子をうかがった。山頂近くまで来て、彼がいまだ後ろを走っていることを確認したから、合流を待つことに決めた。それが最良の選択だと考えたから」(コンタドール、公式記者会見より)
さらには2012年ジロ覇者とのコラボレーションを、「インタレスティングでインテリジェントな決断だった」と現行マリア・ローザは断言した。
山頂間近で合流した2人は、この時点でアル集団に1分07秒差をつけていた。しかも下りに入ると、エスケープ集団から落ちてきたダヴィデ・ヴィッレッラが、チームリーダーのヘシェダルのために牽引を買って出てくれた。おかげで、後方の集団がいつしか16人に膨らんだにも関わらず、決してタイム差を詰められることはなかった。総合2位&3位を擁するアスタナだけでなく、総合4位アンドレイ・アマドールや5位ユーリ・トロフィモフのために、モヴィスターやカチューシャさえも猛烈に加速を試みていたけれど……。
総合首位コンタドールと、第17ステージ終了時点で総合10位につけていたヘシェダルは、最終的に、総合2位から9位が全員揃った追走集団から1分13秒のリードを手に入れた。2015年ジロ・デ・イタリア最後の難関山岳2連戦を控えて、首位コンタドールと総合2位ランダのタイム差は4分02秒→5分15秒へと開いた。ヘシェダルは総合順位を1つ上げた。
「とにかく、またしてもタイムを稼ぐことが出来て、満足している。マリア・ローザを守るためには、それが最も大切なことだから。でも、さすがに、疲れたけどね」(コンタドール、公式記者会見より)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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