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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第12ステージ】クレイジーなほどの勾配を、凄まじいパワーでねじ伏せたヒュー・カーシー「観客が望むものがすべて揃った」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか残り7kmの14%ゾーンからは、ヨナス・ヴィンゲゴーが、先頭を受け持つ番だった。途端に7位フェリックス・グロスチャートナーや8位アレハンドロ・バルベルデが脱落した。
しかもそのまま3.5km半に渡って精力的に牽引する。グランツール初体験の23歳が強いるリズムに、最後まで耐えられたのは8人だけ。うち2人がユンボ(ログリッチ、セップ・クス)で、EFエデュケーションファーストも2人残した(総合4位カーシー、マイケル・ウッズ)。残すエース級は2位カラパス、3位ダニエル・マーティン、5位エンリク・マス、15位アレクサンドル・ウラソフまで、みなとっくに1人になっていた。
勾配が15%に跳ね上がるカーブで、残り3.5km、マスがアタックを打つ。やはり3年前はコンタと共に山道に突入しながら、残り7kmで先頭から脱落してしまった当時22歳は、25歳の今年は真っ先に攻撃に転じた。
ここでヴィンゲゴーとウッズの「アシスト組」は力尽きる。唯一踏みとどまったクスだけは、すぐにマスのチェックに走った。ただ「セッピー」は、ライバルを潰す作業ではなく、つきっきりでマイヨ・ロホの世話をするほうを選んだ。
「セップには申し訳なく思うよ。だって彼なら間違いなく今ステージを勝てたはずなんだ。でも同時に彼の最終盤のサポートに感謝してる。彼がいなかったらもっとタイムを失っていただろうから」(ログラ)
じわり、じわり、と数センチずつしか先に進めないマスのすぐ背後では、アングリルの激勾配ならではの不思議な戦いが繰り広げられていた。それはくんずほずれつでありながら、てんでんばらばらでもあった。
「とにかく自分のペースで上るべきだと心がけた」(ウラソフ)、「普通のレースと言うよりはタイムトライアルのように、ただできる限りペダルを強く踏み続けた」(マーティン)と、みなひたすら自分自身との戦いに挑んだ。それでいて残り3kmの別名「コバイヨス(モルモット)」22%ゾーンでカーシーが加速を切ると、ウラソフはたまらず追いかけた。その背後では総合同タイムで並ぶカラパスとログリッチが、睨み合っていた。
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