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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第12ステージ】クレイジーなほどの勾配を、凄まじいパワーでねじ伏せたヒュー・カーシー「観客が望むものがすべて揃った」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかもちろん2つの山では、マルタンが先頭通過を果たしていた。今区間の短いコースには、さらに3つの山がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。すなわち山岳ポイントを最大41pt収集できる絶好機なのだ。マルタンにとって幸いなことに、前日激しく競り合ったティム・ウェレンスは後方に留まった。しかもロットから3人も前に来ていたというのに、誰ひとり邪魔はしてこなかった。
共に逃げた同僚ピエールリュック・ペリションの助けもありがたかった。最終的にアングリルを除く4つの山で、マルタンは最大限のポイントをかき集めることになる。区間終了時点で山岳賞2位以下とのポイント差は46pt。3週目だけでもトータル81ptが収集可能だから、あと数日は努力が必要だろうか。
「今日の第一目標は、新たなポイントを収集しつつ、ライバルにポイントを取らせないこと。これに関しては完璧に成功した。おかげで少し平和な気持ちで3週目に取り掛かることができるし、ポイントに対する警戒レベルを下げて、区間勝利へ向けて全力を注ぐこともできる」(マルタン)
残り55km、後方では新たなはかりごとが動き出した。3つ目のモスケタ峠へと上り始めると同時だった。3分ほどのタイム差で制御していたユンボ・ヴィスマから、突如としてモビスターが主導権をむしり取ったのだ。ほぼ同時にUAEのダビ・デラクルスは、前方へと駆け出した。
総合13位の大胆な企てに、前夜総合7位から14位へと陥落したエステバン・チャベスもすかさず反応した。しかし4年前に総合3位に食い込んだ後者は、すぐに脚が止まる。やはり4年前にマイヨ・ロホを1日着用したデラクルスは、アタック直後は同僚イヴォ・オリヴェイラに助けられつつ、チームメート2人が待つ逃げ集団へと急いだが……。山からのダウンヒル中に肝心の「前待ち」フォルモロが落車。無念にもUAEの3段攻撃は実らなかった。残り38km、下りきった先の谷間で、エースもアシストもメイン集団に飲み込まれていった。
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