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サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか山頂を越えてもウェレンスはそのまま先頭を突き進む。後方から数人ずつ追いついてきた者たちを受け入れつつ、メインプロトンとの距離を開いていく。スタートから約25km。ユンボとイネオスが道幅いっぱいに並ぶと、集団前方で蓋を閉めた。本日の逃げが決まった..かに思われた。
しかしマルタンは諦めなかった。鉄のカーテンをぶち破り、自ら最前列へと進み出ると、プロトンの主導権をむしり取る。コフィディスの5人全員(2人はすでにリタイア、1人は逃げ集団に潜り込んでいた)で隊列を組み上げ、タイム差制御に乗り出した。さらに2つ目の山へ上り始めると、12人にまで大きくなったウェレンス集団との距離を、一気に縮めにかかった。
一時は50秒差にまで広がった差が、急激に減っていくのを感じたウェレンスは、再び加速を試みた。今度ばかりは独走は許されなかった。逃げに紛れ込んだコフィディスの刺客ピエールリュック・ペリションが、すかさず後輪に飛びついたからだ。しかも後方ではいよいよマルタン自らが本気の牽引を断行した。メイン集団がいきなり半分以上脱落するほどの猛烈な加速だった。こうして山頂手前3kmほどで、望み通りウェレンスを回収した。
ひとつにまとまった集団内で、あまりに互いのみを警戒しすぎたせいだろうか。両者ともに肝心のポイントを獲りそこねてしまうのだ。「もっと収集できたはずなのに。たとえば2つ目の山は、ぎりぎりポイント圏外だった」と後々ちょっぴりマルタンが後悔したように、山頂間際で飛び出した5人を食い止められなかった。慌てて追いかけるも、ポイントのつく上位5位には滑り込めず。
そして、この山からの下りで、マルタンとウェレンスは仲良く一緒に最前線で肩を並べることになる。60kmにも渡る大騒ぎの果てに、先に行った5人も含め、とうとう8人が逃げ集団を作り上げた。
青玉争いに巻き込まれ、さんざん引きずり回されたメイン集団も、ようやく静けさを取り戻した。一旦は遅れた選手たちも、無事にメイン集団へと帰ってきた。そこから先はユンボとイネオスが集団制御権を分け合った。マイヨ・ロホを着るプリモシュ・ログリッチと、前夜マイヨ・ロホを失ったリチャル・カラパスは、なにしろ完全なる同タイムなのだ。リーダーチームとしての責任も2等分した。逃げとの差は2分ほどで保ち続けた。
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