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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第8ステージ】ログリッチが大会史上初のモンカルビリョ覇者に「勝つというのはいつだって気持ちがいいものだね」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかクスを荒々しく追い越し、ライバルたちを蹴散らしたカラパスと共に、ついに先頭を突き進み始めた後でさえ、ログリッチは前を引かなかった。後方から必死で追いかけてくるのはあくまでもマイヨ・ロホの座を脅かす者たちであり、ただカラパスだけが惜しみなく体力を使った。
そのせいか残り2km、勾配が7%台に落ちると、カーシーとマーティンは粘り強く追いついてきた。総合6分34秒遅れ、つまり現時点では総合争い「圏外」のウラソフが打ったアタックなど気にも留めずに、総合上位4人は激しい睨み合いを繰り広げた。
勾配12%が終わる間際だった。残り1.2kmでログリッチが鮮やかな加速を切る。やはり「この山にはこれまで1度も登ったことがない。地形図を見ただけ」とステージ後に振り返ったディフェンディングチャンピオンは、一瞬にしてライバルたちを突き放した。しかしカラパスも負けてはいない。スタート前に「この山はよく知っている」と語った昨ジロ総合覇者は、がむしゃらに敵へと追いついた。若きウラソフを強制的に前から排除し、ついに残り850m、ただ2人だけの世界へと突入した。
ゴール直前で投げキスするプリモシュ・ログリッチ
このときばかりはログリッチは脇目も振らずに前へと突進した。カラパスが残り800mで加速を切ったが、すぐに後輪に飛び乗ると、ほんの50m先でさらに強烈なカウンターをお見舞いした。
「ステージ勝利を目指してアタックを打ったんだ。でもログリッチがスピードを上げると、僕はもはやついていけなくなった。そこから先は自分のペースで走り、できる限り引き離されないようフィニッシュまで努力した」(カラパス)
加速直後にちらりとマイヨ・ロホとの距離を確認すると、ログリッチは前を向きなおし、もはや後ろを振り向かなかった。まるでライバルなどそこにはいないかのように、ただ黙々と前だけを目指した。ひたすら山頂までペダルを踏み抜いた。ライン直前にようやく後ろを軽く確認し、勝利を確信した。
「実は想像していたよりもはるかに厳しい山だったけど、脚の調子は本当に良かった。勝つというのはいつだって気持ちがいいものだね」(ログリッチ)
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