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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第3ステージ】あらゆる犠牲と努力が報われる涙の1勝。ダニエル・マーティン「今日は絶対に勝ちたかった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかラスト200mで誰よりも早く加速をきったダニエル・マーティン
とはいえかつての絶対的エースは、山岳アシストとしてはいまだ最後から3番目でしかなく、その後はアンドレイ・アマドールが力を尽くした。7年前に22歳でラングリルを制したケニー・エリッソンドが残り2.7kmでアタックに転じると、イバン・ソーサが回収に向かう番だった。ネグラ湖ではなく……ほんのひとつ山を越えた先のネイラ湖山頂をブルゴス一周で3年連続制した22歳は、恐ろしくスピードを上げ、先頭集団を15人ほどにまで小さく絞り込んだ。
同じ22歳ながら1年後輩(ソーサは今大会の第11ステージで23歳になる)で、つまりあのタデイ・ポガチャルと同じ1998年生まれのクレモン・シャンプッサンが、そんな集団から飛び出した。いくつかの攻防の後、ビッグネームたちが互いに顔を見合わせる隙を鋭く突いた。フランスの最も優秀な若手に贈られる「ヴェロ・ドールU23」を過去2年連続で手にし、この4月にプロ入りしたばかりのクライマーは、「思いっきり楽しもうと思って攻撃した」。勾配が一気に跳ね上がる残り1.2kmで加速を切り、そのまま夢中でペダルを踏んだ。
ただし最終的に24秒遅れの10位で終える新人は、「もしかしたらスプリントまで我慢すべきだったかも」とちょっぴり後悔することになる。先輩たちはすぐさま猛烈な追走を仕掛け、しかし余計な選手たちは振り落としつつ、残り800mでシャンプッサンを飲み込んだ。あいかわらず小さな競り合いは繰り返されたが、残り300mまで来ても、いまだ8人がほぼ横一線で並んでいた。
「下見はしてない。知っているのはデータだけ」とログリッチが出走前に打ち明けたブエルタ初登場の山は、ラスト200mで決した。誰よりも先に加速を切ったマーティンが、勾配10%の急坂をそのまま先頭で駆け上がると、ラインを一番に越えた。
「怪我のせいでツールでは区間を獲ることができなかった。でも今日は絶対に勝ちたいという気持ちが強かった。チームも僕を完璧にサポートしてくれた。だからこの勝利はチームのためでもあり……妻のためでもある。だって子供が生まれてから初めての勝利なんだから。本当にスペシャルだよ」(マーティン)
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