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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 レースレポート:第3ステージ】あらゆる犠牲と努力が報われる涙の1勝。ダニエル・マーティン「今日は絶対に勝ちたかった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか深い森の奥に潜む山道で、真っ先に牙を剥いたのはメカトラの魔物だった。前日第2ステージで優勝し、総合10位に浮上したマルク・ソレルは、登坂口の手前でパンクの犠牲となる。もちろん同僚イマノル・エルビティの自転車を借りてすぐに走り出し、しばらく先で改めて自転車を変えて山頂へ急ぐ。しかし猛スピードで上り続けた最前列に最後まで追いつくことができぬまま、45秒差で区間を終えた。
前日まで総合4位につけていたエステバン・チャベスはさらに悲劇的だった。残り5kmでやはりパンクした時、側にいたチームメートはスガブ・グルマイだけ。「ディスクブレーキのせいで自転車からホイールを取り外すことができない。だから彼の自転車に乗ったんだ」と振り返ったチャベスは身長164cm。対するグルマイは175cm。借りたバイクは大きすぎた。ちなみにエルビティとソレルの身長差は3cmのみ。チームカーはおろかニュートラルサポートさえすぐには上がってこられない細い山道で、サイズの適した自転車を受け取るまでに、チャベスは大幅にタイムをロスした。最終的には区間勝者から1分06秒遅れて山頂へ到着した。
魔の手を逃れた先頭集団は、イネオスが積極的に牽引した。しかも残り5.6kmから約1kmに渡って、あのクリス・フルームこそが最前線を牽引した。ツール総合4勝・ブエルタ総合2勝・ジロ総合1勝の大チャンピオンは、2019年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでの大怪我以降、いまだ本来のレベルを取り戻せずにいる。それでも「リッチー」……かつての盟友リッチー・ポートではなく、現チームエースのリチャル=リッチーのために、35歳大ベテランは持てる限りの力を尽くした。
「調子は良かった。今日は位置取りが大きかったように思う。ここ2日間は位置取りに苦労させられてきたから、それが違いを生んだ。おかげでこうして先頭で仕事ができた。間違いなく最終峠はいつもより脚の感触は良かった」(フルーム)
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