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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】三つ巴のマイヨ・ヴェール争奪戦に「王手」をかけたサム・ベネット「ライバルたちがあまりに強すぎて、僕はこうするしかないんだ」 / 第19ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか53秒遅れて数人がフィニッシュに飛び込み、最後まで三つ巴でにらみ合ったベネット、サガン、トレンティンは、1分02秒遅れで仲良く1日を終えた。ベネットは2位サガンとの差を55pt、3位トレンティンとの差を69ptに開き、そろそろ「王手」をかけたと言ってもよさそうだ。もちろん数字の上では、いまだベネットはマイヨ・ヴェールを確定させていない。
「日に日に差は開いていっているけど、まだ終わりじゃない。きっと僕の走り方は、他の選手にフラストレーションを与えてるだろうな。でもライバルたちがあまりに強すぎて、僕はこうするしかないんだ。ステージ優勝の可能性は捨てて、ひたすらサガンとポイント争いのことだけに集中してきた。日曜日は条件さえ整えば、ただステージを終えることだけを考えればいいはず。でも、まずは、明日のステージを時間内に走り終えなきゃならない」(ベネット)
その通り。プランシュ・デ・ベルフィーユの個人タイムトライアルを、無事に制限時間内でよじ登らねばならない。気になる制限時間は、優勝者の走行タイムの25%超。ただベネットのようなピュアスプリンターとって幸いなのは、全長36.2kmのうち、厳しい登りは最終5.9kmだけであること。
ただ登坂部分にのみ関して言えば、恐ろしいタイムが叩きだされる可能性がある。というのは第20ステージのフィニッシュには、1級山岳ポイントが設けられている。ポイント配分はステージの着順ではなく、最終5.9km部分のタイム順。タデイ・ポガチャルに対してわずか2pt、プリモシュ・ログリッチに対し7ptのリードしかもたない首位リチャル・カラパスは、つまり登坂部分だけを全力で疾走すればいい。前半はどれだけ遅くなろうとも、制限時間以内なら、それでいいのだ。
もちろん総合を争う者たちは、0kmから36.2kmまで、完璧に力を配分して走る必要がある。TTバイク→登坂用バイクへの自転車交換は、1度だけ許されている。「まだ替えるかどうか決めていない。ぎりぎり直前に決めるつもり」とログリッチは語る。
「コースの下見は済ませている。最後はかなりきついよね。できる限り長く踏ん張り続ける必要があるだろう。明日は他の選手たちのタイムを見ながら、走り方を考えるつまり。力をコントロールしながら走るのか、それとも攻撃的に行くのか。脚の調子はいい。リラックスもしてる。とにかく僕のすべきことは、自分の全力を尽くすことだけなんだ」(ログリッチ)
あと1日マイヨ・ジョーヌを保守すれば、2020年ツール・ド・フランス総合覇者として、ログリッチは永遠に歴史に名を刻む。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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